リョウヤクはクチにニガし
(良薬は口に苦し)
ヤマのあなたのソラトオく
(山のあなたの空遠く)
アサいカワもフカくワタれ
(浅い川も深く渡れ)
シるモノはイわず、イうモノはシらず
(知る者は言わず、言う者は知らず)
ヒャクブンはイッケンにしかず
(百聞は一見にしかず)
筑駒志望の受験生なら、ここ数年の過去問に目を通してふれていることでしょう。毎年、というわけではありませんが、これらのことわざ・格言・詩の一部をかなで表記しておいて、「カタカナは漢字に直してていねいに大きく一行で書きなさい」という設問が頻繁に出題されています。
決して難しい問題というわけではありません。むしろ、ここで得点できなければ合格は遠のく…とも言えそうな問題です。でも、入試問題として出題されている以上、何の意図もなく出題されているとは思えません。
以前、開成中学で「は・ひ・ ・へ・ 」の にあてはまるひらがなを答えさせる出題がありました。また「あまぞん川」の「あまぞん」をカタカナに直させる出題もありました。ただし、『正しい筆順、正しい形、正しいバランスで』という指示がついていました。ひらがな・かたかなですから、当然小学1年生の履修範囲です。この出題を初めて見たときに、基本中の基本である「ていねいに・正しく字を書く」ことの大切さを要求されているのだろう、と思ったものです。(その年に開成中学に入学した生徒から、「出題された先生が、合格者の中でもこの問題で得点できていない生徒がかなりいた、とおっしゃっていた」と聞きました。)
難関校を目指したい=簡単な問題では力がつかない→難問を数多く解かないと…
こんな考えに行きつく受験生・保護者の方が大勢いらっしゃいます。もちろん、その考え方を頭から否定する気はありません。ただ、基本をないがしろにしているように見受けられる生徒がいるのを見過ごせないのです。
2月1日まで残り2か月ちょっと、というこの時期は過去問を解くことが大切なのは言うまでもありません。出題傾向を知る・自分との相性を見る・苦手単元を絞り出す・時間感覚を養う…等々、効用はかなりあります。エクタスでも、過去問指導はとても重要視しており、生徒各自に解いたものを提出してもらっています。その解き方(書き方)を見ていると、毎年のことですが、生徒個々に大きな差が見られます。とてもていねいに(本番のつもりで)一字一字きちんと書いてある答案もあれば、なぐり書きとも言えるような、書いた本人でも判読が難しい字で書いてくる人もいます。
また、記述問題でもせっかくいいところに目をつけることができても、誤字・脱字や文末ミスで点を失う人が少なくありません。
もちろん、その都度注意していますが、その時に返ってくるのはたいてい同じセリフです。
「本番の時は気をつけます。」
入試本番でていねいに、気をつけて書くのは言うまでもありませんが、私はそのセリフは信用しません。練習でできないことが、なぜ本番でできるのか?野球で、練習もしていない変化球を本番で突然投げられるでしょうか?アイススケートで、練習もしたことのない4回転ジャンプをいきなり本番で飛ぶような選手がいるのでしょうか?
ちょっと考えればわかることです。いきなり上手になる人はいませんが、日ごろから意識して練習するうちにどんなことも上達してくるものです。自分の解いた過去問や、授業で書いたノートなどをじっくり読み直してみて下さい。そして、「この書き方ではいけない」と、今気づいた人はまだ間に合います。
『木の長きを求むる者は必ず根本を固くす』
どういう意味の言葉なのか、よく考えてみて下さい。この言葉を理解できた人は、もう大丈夫。ラストスパート、全力を出し切って下さい。