皆さんは,新しい学年の学習には慣れてきましたか?時間に余裕ができてきたら,視野を広げるためにも,参考書から離れた理科の話に触れてみるのもいいと思います。そこで少し参考書には載っていない話をしてみましょう。
今,先生は世界中の植物のすごい生態をまとめた本を読んでいます。その本にオジギソウの話が載っていました。オジギソウはマメ科の植物で,何かが葉に触れると葉がすばやく閉じることで知られています。皆さんは,葉をつついて閉じる様子を見たり,遊んだりしたことはありませんか?機会があれば,ぜひ触れてみてくださいね。
さて,なぜオジギソウは葉が閉じるのでしょうか?そもそも植物が活発に動くだけでもすごいのですが,その理由を考えてみるのはとても楽しいことです。すぐに下の文章を読まないで,一度自分で考えてみるのもおもしろいですから挑戦してみてはどうでしょう。
何か思いつきましたか?
生物の活動は基本的に2つの大きな理由によるものが多いので,そこから推理していけば正解に近づくことができます。その2つとは,「生存すること」と「子孫を残すこと」です。入試問題でもそうですが,未知の問題に挑戦するときは闇雲に突き進むのではなく,大きな道筋を見失わないことが大切ですね。
先生が読んでいる本には次の3つの理由が書かれていました。1つ目は強い雨や風を避けるため。2つ目は強い日光を避けるため。3つ目が葉を食べにきた昆虫や動物に,「枯れてますよ~」「おいしくないですよ~」とアピールするため。この3つです。どれも基本的に体を守る働きとして考えられています。もしかしたらこれ以外にもあるかもしれませんね。ぜひ考えてみて下さい。
その本には,オジギソウの葉がおじぎをする仕組みも説明されています。当然,植物には筋肉がありません。そこで,オジギソウは体内の水分を移動させて葉を閉じています。おもしろいのは,何かが触れた刺激を感じると,その刺激が電気信号となって伝達され,水分を移動させる,ということです。人や動物の神経伝達の電気信号と似ている,というのですから驚きですね。植物と動物は体のしくみが大きくちがうのですが,実は似ているところもあるということです。
こんな実験も書かれていました。麻酔作用のあるエーテルをオジギソウの葉にしみこませると,何かが触れてもオジギソウの葉が閉じなかった,というものです。つまりオジギソウにも麻酔が効くということになります。ますます人や動物にそっくりですね。
さらに,オーストラリアの大学の研究チームで次のような実験をしているそうです。
まずオジギソウの葉に水滴を落とし,葉が閉じることを確認します。そして同じ葉に対して何度も同じように水滴を当てていくと,やがて何の反応も見られなくなったそうです。
これはオジギソウの葉が「水滴は有害なものではない」と学習した,と考えることができます。しかも,この実験を終えて数週間後に,同じ葉に水滴をたらしたところ,この葉はやはり閉じることがなかったそうです。つまり数週間前のことをこの葉は記憶していた,ということになるわけです。
皆さんは考えたことがありますか?植物が学習をして,しかも記憶するということを。
このオジギソウの記憶は,人や動物の記憶のしくみと類似点がある,との研究もあるそうです。まだ研究の途中のようですが,これからの研究が楽しみですね。
たった4ページだけで,これだけのお話がつまっています。どうですか,他の植物のことも知りたくなったのでは?
2017年の中学受験も終わり,今は落ち着いた時期です。新しい学年の勉強もペースがつかめてきたころではないでしょうか。ぜひ時間があったら,このような話に触れてみてください。もちろん植物でなくてもいいです。世界は不思議なことだらけです。その一端に触れることは,実は学習の幅を広げることにつながります。そして皆さんの思考の幅を広げてくれます。中学入試では未知の問題に出会うことはよくあることです。知らないことでも考えることで正解にたどりつくことができるようになるためには,さまざまな考え方に触れる機会を増やしていくことが大切です。
ちなみに埼玉の学校の入試問題で,今年,オジギソウに関する問題が出題されていました。興味がある人は挑戦してみるのもいいでしょう。