本年度も筑駒・御三家中学を始めとする最難関中学校の理科の問題を紹介しながら、過去に出題された問題や最難関校で求められる力を紹介していきます。
本年度の桜蔭中の大問3では「ムラサキイモ」を用いた指示薬の問題が出題されました。
みなさんのよく知っているリトマス紙やムラサキャベツ液と同様に、成分が水に溶けることで酸性、中性、アルカリ性を示す指示薬として使用することができます。今回の問題は食塩水、お酢、アンモニア水にムラサキイモの粉を水で溶いたもの、BTB溶液、ムラサキキャベツ液を加えたときの色の変化を比較する実験でした。
ムラサキイモにはアントシアニンという色素が含まれています。このアントシアニンは液体に溶けたときに、酸性であれば赤っぽい色、中性であれば紫っぽい色、アルカリ性であれば青っぽい色に変化する性質があります。「っぽい色」と書いたのは、アントシアニン以外に含まれる成分により物質によって違う色に変化するからです。同じようにアントシアニンが含まれる身のまわりのものには、ムラサキキャベツやムラサキタマネギ、ブルーベリーなどがあります。
ここまで出てきた指示薬として使えるもののうち、ムラサキイモ、ムラサキキャベツ、ムラサキタマネギ、ブルーベリーは食材として使われていますね。料理の途中や食べているときに色を変化させることができますし、とても簡単に実験をすることができるので中学入試の題材としてこれらは今まで多くの学校で取り上げられてきました。
例えば、ホットケーキミックスにブルーベリーを混ぜ、ブルーベリー味のパンケーキをつくります。ホットケーキミックスには重曹(炭酸水素ナトリウム)が含まれているため、混ぜたすぐ後は弱いアルカリ性なので生地は紫に近い色をしていますが、生地を焼いて加熱することで重曹(炭酸水素ナトリウム)はアルカリ性の強い炭酸ナトリウムへと変化します。このため、加熱をすると生地の色がどんどん青色へと変化していき、焼き上がる頃には青緑色に近い状態になります。更に、できあがったパンケーキにレモン汁などの酸性の物質をかけると、今度はケーキがピンク色へと変化します。すべては液性が変わったことでブルーベリーに含まれているアントシアニンの色が変化することで起こります。ちなみに、炭酸水素ナトリウムが炭酸ナトリウムへと変化する反応は炭酸水素ナトリウムをパン生地に入れる理由とともにしっかりと理解しておく必要があります。
同じように、ムラサキキャベツを切り刻んで焼きそばの具材とします。焼きそばの麺には「かんすい」というアルカリ性の物質が含まれているため、ムラサキキャベツを具材として焼きそばをつくると緑色の焼きそばができあがります。また、できあがった焼きそばに隠し味としてお酢を加えると・・・この先はもうわかりますね。
今回はアントシアニンを含んだものを紹介しましたが、このように液性によって色が変化するものは他にもたくさんあり、前述の通り中学入試の題材として実際に取り上げられています。
リトマス紙、BTB溶液、フェノールフタレイン液、ムラサキキャベツ液、このあたりは学校の教科書にも塾のテキストにも出ている内容です。
ムラサキタマネギ、ブルーベリー、パンジー、アサガオ、バラ、ブドウ、黒豆、サツマイモの皮、紅茶、アジサイ、ツユクサ・・・などなど、身のまわりで液性によって色が変化するものはたくさんあります。
実際、近年の入試だけを見ても、これらのものやこれらのものを使った実験が桜蔭、女子学院、渋渋、立教新座などの難関校で出題されています。
もちろん、その場で考えて解くことも重要ですが、身のまわりのものがどのように変化するのかを知っているか知らないかで差がつく問題であると言えます。
6年生のみなさん、いよいよ受験生になりましたね。
これから10ヶ月、自分の第一志望校を目指し日々努力を続けてください。
しかし、近年の最難関校の中学入試ではこういった身のまわりで起きていること、身近な理科が出題される機会が増えています。
受験勉強の傍ら、自分の身のまわりで起きていることに興味関心を持ち、目を向け、考えることを意識してください。
みなさんの身のまわりに受験の、理科の題材は数え切れないほど潜んでいます。
がんばれ!受験生!