これまでの連載をまとめます。
・開成中の入試出題文・華恵(はなえ)『本を読むわたし』より。
愚鈍な存在に対し、嫌悪感と気遣いが同居する傲岸な感性を隠さない少女。…自分の思いに正直に向き合うことの大切さ。
・麻布中の入試出題文・森絵都『竜宮』より。
美談の筋書きを優先させ、人が孤独のうちに亡くなった事実を見落としていたタウン誌編集記者の深い悔悟。…大事なことは、人間の実像と真情。
・武蔵中の入試出題文・堀田善衞の文より。
異文化の本質は、現地の生業生活者の中に溶け込まなければわからない。…生活実感の大切さ。
・桜蔭中の入試出題文・中島義道「孤独な少年の部屋」より。
生活が貧しければ、家の手伝いでもするのが筋。しかし、往時の少年達は昆虫や植物の採集という、実益を顧みぬことに熱中。純粋な探求心も、成長過程には必要。…「”正論”より”実感”」。
・女子学院中の入試出題文・峰飼耳「涙」より。
海の猛威による、甚大な津波被害。危険性は万人周知。しかし、三陸の漁業を再興させようと奮闘する人々は、海から受けた恩恵を深く心に抱き、海難に襲われてなお、海そのものを愛する信念を貫いて、苦難を乗り越えようとしている。…政策的な「震災復興」以前に、被災地の人々の心の声を忘れまい。
・雙葉中の入試出題文・宮澤賢治「学者アラムハラドの見た着物」より。
学者のアラムハラドが、弟子達に教えたこと。人の本性は、正義を愛し道を求め善を行うことにある。…内面陶冶の必要性。
●2013年の御三家・国語科出題内容も、主体的自我の内面実感が照射されていました。ここには、家族・友人・自然環境等々の環境世界との”絆”をメインテーマとする一般的出題傾向は見当たりません。さて、今年はどんな問題になるでしょう。今から楽しみです。受験生諸兄は、どうか、これらの出題が強く訴える、自主・自立・自存の心意気をもって、最後まで負けずに走りぬいていただきたいと願うものです。