日本の憲政史上初の女性総理大臣が誕生した2025年。今年もまた、新たな歴史が作られました。私が子ども時代を経て社会人となり、何年も塾の講師として多くの生徒たちと接してきた間も、着実に歴史は動いてきたのだと実感します。ことに女性の地位は確実に向上し、様々な分野への進出が見られます。
たとえば、鉄道業界。子どものころは女性の車掌なんて全く見たことがありませんでしたが、最近はむしろ女性の車掌が当たり前になってきています。塾の先生にしても、私が教え始めた頃は95%が男性教師でした。理由は様々ですが、一つには生活スタイルの変化があるでしょう。鉄道業界にせよ塾業界にせよ、基本的には夜遅くまで働く仕事です。一昔前までは、子育ては母親の仕事、という風潮がありました。一般的に、幼い子が夜中の11時、12時まで起きていることはありませんから、夜遅くまでかかる仕事は女性には無理と思われたのでしょう。また、家事も奥さんの仕事と思われていましたから、夫(父親)が仕事から帰るまでに食事や風呂の準備をするのは妻として当たり前、のような考え方がはびこっていました。でも、家事は夫婦で助け合って行うのが現代の常識となってきました。子育ても同様。育児休暇を男性に取らせることが義務付けられていることも知っている人は多いでしょう。男女雇用機会均等法という法律もでき、「女性だから…」という理由で雇用を断ることはできない社会になりました。
また、昔は普通の営業関連の職場においても部長、取締役といった上司は男性ばかりでした。女性の大半は高卒かせいぜい短大卒で、会社に入社しても、言葉を悪く言えば「雑用係」扱い。なぜなら、5~6年もすれば結婚し退社するという暗黙の了解があったからです。でも、今や女性の上司がいるのは当たり前、中には社長にまでなる女性も少なくありせん。
では、文学の世界はどうでしょう。古くは平安時代に紫式部や清少納言が活躍し、明治以降でも樋口一葉や坪井栄などがいて、与謝野晶子や平塚らいてうなどは社会でも勉強しますね。でも、主だった小説家の名前を思い出そうとすると、圧倒的に男性が多いと思います。昔は読み書き一つとっても、女性は身分の高い一部の人しかさせてもらえなかった歴史を物語っています。
皆さんが入試問題で読む文章も、時代背景を取り違えると大きな勘違いになりかねません。特に家族が出てくるような話の場合、現代社会の常識とは180度違ったものの考え方、行動の仕方である場合があります。こういうとき、「僕だったら…」「私だったら…」とか、「今の世の中では…」という考え方では通用しません。
以前、中学入試にもよく引用された向田邦子さんの随筆を読んでいると、今では考えられないようなことがたくさんあります。家族には決して謝ることがなかった明治生まれの向田さんのお父さんや、何一つ不平不満を漏らさず夫を支え続けた向田さんのお母さん。こうした話を読むと、「なぜ…?」と思うことでしょう。でもそういう時代があったのだ、と認識した上で読まないと、その場面の人物の心情も読み違えてしまいます。
背景をしっかり考えながら文章を読むようにしていきましょう。