横文字文化

2020/6/1

エクタス国語科より

新型コロナウィルスの影響でかつてない生活様式を強いられる中、皆さんも周りのご家族も大変な毎日を過ごされていることと思います。2月から徐々に拡大していく中、私でさえ経験したことのない「緊急事態宣言」が出され、2ヶ月も塾生の皆さんと対面する授業ができないという事態になっています。
そんな中、「新しい生活様式」という意識が出始め、様々な言葉が使われるようになりました。ゴールデンウィーク中は『ステイホーム』、危険な状態が続けば『ロックダウン』、パソコンでの仕事は『テレワーク』で、街に出るときは『ソーシャルディスタンス』・・・
とにかく横文字の聞き慣れない言葉が次々と発せられたのは、皆さんもニュース等で耳にしたことと思います。小6の皆さんは歴史で明治維新を学んだ際、鹿鳴館に代表される西洋文明が急速に浸透していったことを聞いているでしょう。その頃から、従来の日本語(大和言葉)より外国語(横文字)の方がかっこいい、という意識が日本人の中に芽生え、今でもどこかにそんな気持ちがあるのではないでしょうか。

ある随筆文にこんなことを書いた人がいます。「日本人が日本語で話すことのどこがかっこ悪いのか?」たとえば喫茶店でコーヒーを注文すると、店員が「アイスですか?それともホットになさいますか?」と聞く。「熱いの」と返事をすると、若い女性がクスッと笑い「かしこまりました」と言う。レストランでセットを注文すると「パン、またはライスがつきます」と言うので「ご飯」と言うとまたまたクスッと笑われる・・・私は日本人だから日本語で頼んでいるのに、なぜ馬鹿にされたような扱いを受けるのか、という内容です。

日本では、一時期横文字が禁止された時期もあります。それは、第二次世界大戦の時です。アメリカやイギリスを相手に戦争している中、敵国の言葉である英語は使用するな、というわけです。たとえば、『プロ野球』は『職業野球』、『ピッチャー』は『投手』、『ストライク』は『よし』で『ボール』は『だめ』という具合に・・・この時期の野球中継のアナウンサーは大変だったと思います。「ツーアウトフルベース。ボールカウントはスリ-ボールツーストライクのフルカウントです。」と言うところを、「二死で走者が塁に満ちています。いい球二つ、だめな球三つ・・・」という具合です。
戦後、再び西欧文明をどんどん取り入れていったのが高度経済成長期と言われる時代です。このころから横文字が再び広がりを見せます。「我が家」は「マイホーム」、「同級生」は「クラスメイト」、昼食は「ランチ」。どれも皆さん聞き慣れた言葉ですね。中には「和製英語」などと呼ばれるものもあります。「サラリーマン」「ガソリンスタンド」「シャーペン(シャープペンシル)」などはどれも日本人が作り出した言葉で、英語では通じない言葉なのです。

今はコロナウィルスの影響でそれどころではありませんが、昨年まではゴールデンウィークなどは国内よりも海外旅行に行く人が増え続けていました。明治維新の頃の日本人同様、現代の日本人も海外にかなりあこがれを持っているようです。もっとも、現代は「グローバル化が進んでいる」などとも言われていますが。
日頃使い慣れている日本語も横文字に変えて言うと同じもののはずなのに違うもののように聞こえてしまうのも、言葉の面白さかもしれません。時間があるときに、パッと目についた横文字の言葉を日本語に置き換えてみる・・・というのも楽しいかもしれません。

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