2020年 開成中 国語入試問題より

2020/3/13

エクタス国語科より開成中

2020年、開成中国語入試問題から。

小6男子・女子をめぐる人間模様。合奏会でアコーディオン担当の4人。強引で自尊心の強い、リーダー格の「カナ」。いつもカナにひっぱられがちの「めぐ美」。カナが好意を打ち明けた「小磯」は、「まやまや」に告白。しかし、カナは、まやまやに妙な気遣い。
カナの思いとは…
小磯から告白されたまやまやを攻撃すると、自分が小磯のことを好きだったことや、失恋の腹いせに攻撃していることが周りに知られるかもしれないため、それを避けたかったからか?または、まやまやに負けたとは認めがたく、小磯をばかにして、小磯への告白を冗談でからかってしたことだと感じさせることで、自分の自尊心を守りたかったからか?
(朝比奈あすか『君たちは今が世界(すべて)』による)

小学6年生の男女どうしで、複雑な人間模様が展開されます。上記を通読された読者のみなさんも、一度では十分にあらすじをつかみきれないのではないでしょうか?(お時間があれば、お手持ちの用紙などに人物相関図を書いて、ご検討ください。)

異性へのほのかな好意を語りつつ、ここに通底する感情は、本来の恋愛意識に成熟する以前の何者かではないでしょうか?もちろん、本人たちは真剣ですから、その思いや交わりを過小に評価することは、厳に慎むべきでしょう。

皆の心の奥に無意識のうちに貼り付いているのは、むしろ、他者や周囲からの無言の圧力に対する恐れの念や、忖度感情といったものに近いのではないかと察します。「嫌われたくない、仲間はずれにされたくない」という行動原理を前提にみていくと、物語の中の多くの振る舞いが、驚くほどすっきりと説明できるように思えるのです。

これは、決して否定されるべきことではありませんね。自分と異なる他者を慮る習慣は、社会性の第一歩でもあり、日本的な美徳とも言えましょうか。ここで苦心を重ねた人は、頑迷な自意識で突っ走ってきた人などに比べ、将来、はるかに芳醇で豊かな人間性を身につけられるのではないかと思えます。 “他者への気遣い”を栄養にしてこそ、“真の自分らしさ”を形成しうる……大切なことに気づかせてくれた、今年の開成中の出題でした。

関連記事related posts

エクタス国語科より

『合格を勝ち取る人』

2024年の私国立中学入試もほぼ終了しました。見事に第一志望校に合格した人もいれば、残念ながら涙をのんだ人もいるでしょう。入試も一つの勝負事ですから、「合格」「不合格」のどちらかの結果が出てきます。指導する側は、もちろん…

エクタス国語科より

指示内容の指摘

   はじめまして。エクタスたまプラーザ校・大宮校で国語を担当しております蛯名政之と申します。よろしくお願いいたします。  さて、今回は指示内容を指摘する問題についてお話しいたします。    太郎は床…

エクタス国語科より

国語科の過去問添削

2学期が始まりしばらくたちました。6年生にとってはラストスパートの時期になりますね。過去問演習も本格的に始める方も多いのではないでしょうか。 まだ受験学年を迎えていない皆さんは、6年生2学期の過去問対策についてどのような…

新着記事latest posts

2025/5/14

お知らせピックアップ

【小1~3】6・7月試行(思考)力・記述力 診断テスト 申込受付中

低学年の現段階で求められる力を診断 筑駒・御三家・駒東中を目指す上で必要となる、与えられた未知の課題を試行錯誤して正解を導き出す「試行力」、考えた答えを書き言葉で表現するための「記述力」。最難関中学受験専門塾だから可能な…

お知らせピックアップ

2025/5/14

お知らせピックアップ

2025年度夏期講習 7/21開講

先輩たちに続く夏。 2025年入試では、在籍91名中47名のエクタス生が筑駒・御三家・駒東中の合格を勝ち取りました。 中身の詰まったエクタスの夏期講習で自分の力をとことん磨き、先輩たちに続く夏にしましょう。 小1~小3は…

お知らせピックアップ

2025/5/14

エクタス国語科よりお知らせピックアップ

[小1・小2・小3|国語] 読解と記述の融合|技能教科としての反復トレーニング

低学年の国語力の差は単純な学力差や能力差ではなく、国語体験の違いによるものです。「これまでにどんな文章を読み、どのように考えてきたのか」は、お子さまそれぞれにみな違うので、個人差を無視して一律の指導を行なっていては合理的…

エクタス国語科よりお知らせピックアップ

pagetop