皆さんは、「チクシュルーブ・クレーター」という名前を知っていますか?今からおよそ6600万年前に、今のメキシコに小惑星が落ちてできた巨大なクレーターの名前です。直径が約160kmにもなるとても大きなクレーターで、現在、世界中でわかっているクレーターの中で第3位の大きさになります。
さて、「およそ6600万年前」でピンときた人もいるのではないでしょうか?あの恐竜が絶滅した原因と考えられている小惑星の衝突によってできたクレーターのことです。かつては、恐竜の絶滅についてさまざまな説がありましたが、今はこの小惑星の衝突が原因であると、多くの科学者たちが考えています。その小惑星の衝突によって、一説によれば地球上の生物の75%が死滅したと考えられています。そのときに恐竜も地球上からいなくなったのでしょう。
恐竜の絶滅は、この小惑星の衝突による、ということで科学者たちの考えはまとまりつつありますが、実は衝突の後、何がどのようになって生物が死滅したのかがよくわからず、さまざまな意見が述べられてきました。粉じんによって日光がさえぎられ、気温が下がったからとか、あるいは火山噴火がたくさん起きて有毒なガスが広がったから、などなどです。
しかし、今から3年ほど前にこのチクシュルーブ・クレーターを精密に調査する研究が始まり、最近ようやくその研究結果が発表されました。発表を行った研究チームによると、原子爆弾100億個にも匹敵する大爆発がおこり、衝突した陸地は蒸発してしまったようだ、と推測しています。そして隕石が衝突した場所から1000km以上も離れたところまで温度が上がり、生物が焼け死んでしまったのだろう、ということです。また、高さが数百mにもなる巨大な津波がおこったようだ、と報告しています。これだけでも、とてつもないできごとであったことが分かりますが、さらに3000億トンを超える硫黄ガスが大気中に広がっていったと推定しています。そして、この硫黄ガスこそが地球の気温を下げた直接の原因であったのではないか、と説明しています。
このように、はるか6600万年前のできごとが少しずつ明らかになってきています。とてもすばらしい研究の成果ですね。この結果は3年もかけた地道な努力によるものです。科学の研究とは、その発見の華やかさの裏にとても努力のいる地味な研究があってこそのものであることを知って欲しいと思います。皆さんも初めから華やかな結果だけを求めるのではなく、コツコツと努力を重ねて、その結果としてすばらしい成果を手に入れて下さい。皆さんが取り組んでいる受験も同じですね。「合格」という成果を得るためには、近道はなく日々の努力によってしか得られないもの、ということですね。