武蔵中の理科の入試問題より

2020/8/20

エクタス理科より武蔵中

暑さが大変厳しい日が続いていますね。熱中症に気を付けるために冷房や涼しい格好も大切ですが、換気も大切です。温度変化に気を付けて残りの夏休みを乗り切りましょう。

さて、今年の武蔵中の大問2では鳥類の気嚢(きのう)に関する問題が出題されました。鳥類の気嚢に関する問題は、過去にも海城中、普連土学園中などで出題されています。

ほ乳類や鳥類は肺に空気が出入りする際に血液中の二酸化炭素と空気中の酸素を交換します。私たちほ乳類の肺は気管がつながった側の反対側は行き止まりになっていて、肺がふくらんだり縮んだりすることで肺に空気が出入りします。このつくりでは、肺の中の古い空気と吸い込んだ新鮮な空気が混ざってしまいます。鳥類では肺の前と後ろに気嚢という部分がつながっています。空気を吸うと新鮮な空気は後ろの気嚢に入り、ここから肺に新鮮な空気が入ります。そして、肺に新鮮な空気が入ると、肺の中の空気が前の気嚢に押し出されます。このようなつくりを持つことで、空気を吸ったときにも吐いたときにも肺には常に新鮮な空気が入り、効率的に呼吸をすることが可能となります。鳥類の呼吸の仕組みに比べると私たちほ乳類の呼吸の仕組みは実は効率が大変悪いことになります。

気嚢を持った動物、という意味では鳥類の他に恐竜時代の中頃~後半に栄えた恐竜の仲間が挙げられます。
なぜこれらの恐竜の仲間は気嚢を持っていたのでしょうか。

今からおよそ3億年前~2億5000万年前までは、地球の酸素濃度が非常に高く、は虫類に似た身体的特徴を多く持つほ乳類の祖先(は虫類型ほ乳類と言います)が繁栄していました。ですが、そこから地球の酸素濃度は減り続け、およそ2億年前には12%ほどになり、ほとんどのは虫類型ほ乳類は絶滅してしまいました。そしてここから恐竜が繁栄したことになります。
酸素濃度が高かったのは、枯れた樹木を菌類が分解する際に酸素を消費して二酸化炭素を放出しますが、大昔の地球では菌類が枯れた樹木を分解するまで進化しておらず、枯れた樹木が分解されずに地中に残ったためであると考えられています。(この樹木がその後石炭になりました。)菌類が分解をしなかったために消費されるはずの酸素が消費されずに酸素濃度が高くなったということです。また同時に二酸化炭素の放出量も減少しました。このことがその後の酸素濃度の減少に関係しています。二酸化炭素の減少→温室効果ガスの減少→地球の温度の低下→氷河の形成→二酸化炭素不足による光合成量の不足、気温の低下により多くの植物の絶滅→酸素濃度の減少、という具合に地球の酸素濃度が低下しました。この際に恐竜の生存を可能にしたのが気嚢であったと言われています。気嚢のようなつくりを持っていなかったは虫類型ほ乳類はほぼ絶滅してしまったということです。その後酸素濃度は次第に増加していきます。
気嚢を持った恐竜が鳥類の祖先であるシソチョウへと進化したのはこの後になります。

では、同じ気嚢を持つ恐竜と鳥類、なぜ現在は恐竜のみが絶滅し、鳥類だけが生存しているのでしょうか。
このことはおそらく、皆さんが受験勉強をする中で学習していることだと思います。
受験が終わってからになりますが、興味がある人は詳しく調べてみてください。
きっと、今まで知らなかった大きな発見がありますよ。

体調管理に気をつけて。
頑張れ!受験生!

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