今年の筑駒中の入試問題の大問5では、雨を降らせる雲の写真を答える問題が出題されました。雲と天気に関して、理科教師となった今では当然の内容なのですが、子供の頃にすごいと思った祖母の知恵を紹介させていただきます。
北海道の自然の中で育った少年時代、祖母はことあるごとに「天気予報」をしていました。天体や動植物での天気予報は有名ですが、祖母はそれらはもちろんのこと、雲を見て「雨が降る」ことを確実に予報していました。特に印象的だった3つの予報を、解説をつけながら書いていきます。
①「そろそろ雨になるな。」「明日は雨だな。」「明後日は(天気が)崩れるから。」
→ ほぼ予報通りに雨が降ってきました。母は大助かり!
②「今日は川に行っちゃいけないよ。濁る(水量が増える)から。」
→ 釣り好きだった私へ。晴れているのに言われることが何度もありました。
③「今日は夕立が来るから早く帰ってきなよ。」
→ 北海道では夕立が降ることは少ないのですが、こう祖母が言った日の夕方はほぼ必ず夕立が降ってきました。
①に関して
どの雲が出るとあとどれくらいで天候が崩れる(雨が降る)かを経験の中で身につけていたのだと思います。「そろそろ雨が降る」のは空を見ると何となくわかりそうですが、翌日や翌々日の天気はどのように予報していたのでしょうか。例えば、温暖前線が近づいてくると1000m以上離れた場所に巻雲が発生します。その後、高層雲、乱層雲などがやってきて雨が降ります。この巻雲とその遙か後方にある雲の様子を見て翌日や翌々日に雨が降ることを言い当てていたのですね。
②に関して
川の水があふれて危険、ということで私の身を案じて言ってくれた言葉ですが、釣り好きの私はとうてい納得がいきません。渋々言うことを聞いていました。言われたある日何かの用事で橋の上を通ると川の水はあふれ濁った水が流れていました!「晴れているのになぜ?」祖母は山の方の雲の様子を見ていたのでしょう。山で雨が降ると川の水は斜面に沿って一気に流れてきますから、山の中腹からふもとにかけては水量が一気に増えることになります。
③に関して
晴れた日に地上があたたまると積雲ができます。これが思い切り発達するといわゆる積乱雲になります。上昇気流、高温多湿、地上と上空の大気の気温の高低差が積乱雲の成長の要因になります。北海道の夏は気温も湿度も低く、夕立が降ることは珍しいです。突如現れる積雲の出現を、風のながれ、雲の動きを目で、気温、湿度を肌で感じて夕立を予想していたのでしょう。
祖母の知恵にも、きちんとした理論的裏づけがあったのです。皆さんも日常生活の中の何気ない自然現象に大いに興味関心を持って、理科の学習に活かしていきましょう。