「多様性を大切に」「どんな人も生きやすい社会を目指す」こうした言葉を頻繁に耳にするようになって久しくなりました。入試でも国際協調やSDGs、ジェンダー、社会保障制度などと絡めてよく出題されますので、特に6年生の皆さんには意識しておいてほしいテーマの1つです。用語だけでなく、「どのような対策が考えられるか」「あなたならどうするか」といった形式で出されることもあるので、しっかりと考えをまとめられるようにしておくと良いでしょう。
しかし現実の世界では、これらの目標を達成するのは非常に難しい課題となっています。予算の制約や関係省庁の連携などの目に見える障壁だけでなく、そもそもそこに至るまでの議論が進まないことも多く、時には大きな衝突につながる場合もあります。その遠因にあるのは「知らない」ということなのではないでしょうか。よく知らないからこそ誤解や偏見が生まれたり、自分には関係ないこととして関心を持てなくなるのだと思います。とかくこうした問題では「思いやりをもって」という表現が使われますが、相手をよく知らなければ「何に困っているのか」「何が必要なのか」思いやるのは難しいですよね。
こうした状態から一歩進み、「まず知ってみる」ことを促す取り組みが最近よく見られるようになりました。先日都内で開かれた「子どもの視展」という展覧会では、日常生活で見られるさまざまなものが現実より大きく、重く作られており、それに触れたり持ってみたりすることで、子どもの目線や感覚を疑似体験できる仕掛けとなっていました。例えばランドセルは19kgに設定されており、同じく大きく作られた給食袋や水筒とともに背負うと、私でも後ろに引っ張られるように感じました。体調が良くない日や天気が悪い日、暑い日もあることを考えれば、最近取り沙汰されている「重たいランドセル問題」がいかに子どもにとって切実な問題であり、「最近の子は体力がない」とか「我慢が足りない」で済まされないものであることが実感できます。また、「認知症世界の歩き方」(著:筧裕介氏)という書籍は、認知症の人から世の中がどのように見えているかがイラストと文章でわかりやすく説明されており、認知症の人が感じること・困ること・伝えたいことを知るきっかけになりそうです。
「自分」とは違う「他者」について、全てを完璧に理解することは無理なことです。しかし、こうした機会を活かして「理解しようとする」ことならできるのではないでしょうか。そして何より、さまざまなものに関心を持つことや知ろうとすることは最難関中入試を目指す学習において最も重要な姿勢であることを、ぜひ覚えておいてください。