入試の日々も終わり、新年度がスタートしました。新6年生の皆さんはもちろん、これから社会の勉強がスタートする新4年生の皆さんも、どんな問題が出されていたのか気になっているのではないでしょうか。
入試問題というのは、たとえ最難関の学校であっても、誰も知らないようなものや奇をてらったものばかりが出るわけではありません。ほとんどの問題は塾の授業で取り扱う範囲のものから出されています。ただし、それらを表面的に覚えているだけでは太刀打ちできないのが、最難関の最難関たるゆえんです。例えば今年の桜蔭中の入試では、「領空」がどこの範囲までを指すのか、「主権」の定義は何なのか、という問題が出されていました。どちらの言葉もごく基本的なものですが、その本質を理解しているかどうかが問われています。日々の地道で深い学習の大切さが実感できますね。
ではこの問題を題材に、もう少し思考を広げてみようとおもいます。先に述べた「主権」は、その国の領土・領海・領空の範囲内で及ぶものなので、その国の法律の効力の範囲も同様になります。ではもし、国際線の航空機の中で犯罪が起こった場合は、どこの国の法律が適用されるのでしょうか?答えは「原則、その航空機が所属する国の法律」です。例えば日本の航空会社が所有する航空機であれば、日本の法律を適用するということですね。ただし、注意点が二つあります。まず、この規定にあてはまるのは「離陸のために滑走を開始してから、着陸し滑走を終えるまで」です。ですから先の例の場合も、航空機が動いている間は日本の法律が適用されていますが、容疑者が着陸したのが外国であれば、その後はその国の法律に従うということになります。次に、これはあくまで「原則」です。これとは別に、「その航空機が飛んでいるのがどこかの国の領空だった場合は、その国の法律も適用できる」という考え方もあり、そのときの状況に応じてどちらかになる、というのが現実です。「日本で起こった犯罪の容疑者を外国から強制送還した際、航空機が公海上に出たところで逮捕を行った」「国内を飛行する航空機内での盗撮について、事件が起こったときに飛行していた県の条例を適用して逮捕した(のちに釈放)」など、興味深い事例がいくつもあります。
この他にも、掘り下げてみたくなるテーマがたくさん出題されていました。3/12(日)の入試報告会でもいくつか紹介する予定ですので、どんな話が出てくるか楽しみにしていてくださいね。