社会科の学習をしていると、日本で最も長い川、二番目に長い川、九州地方で最も長い川…といった具合に、全国の河川の長さについて目にすることがよくあります。
川の長さを一言でいえば、「河口から水源地までの長さ」です。しかし、例えば下の多摩川の河口付近の地図をみてみると、羽田空港の滑走路は埋め立てによってどんどん東京湾の方へ伸びていったわけで、多摩川はそのたびに長くなっていくと考えるのでしょうか。また、川を上流の方にさかのぼっていくと、いくつもの支流に枝分かれすることが多いですが、そうすると水源地がたくさんあるじゃないか、と思ったことはありませんか。
まず、川の長さを決める原点である「河口」です。
先ほど紹介した多摩川のように、埋め立てによって河口の位置が海側へ移動する場合もあれば、信濃川や荒川のように治水のために放水路を掘って新しい川がつくられる場合もあります。しかし、そのたびに河口の位置を変えるとなると、流域に設置された水位や流量を観測するポイントも、全部が距離表示を変更しなければなりません。そこで、国土交通省によって原点として定められた河口は、実際の河口が別の場所に代わっても、原則としてその位置は変更しません。大きな河川には「河口から0km」と示された「ゼロポイント」の標識が設置されています。参考までに、東京湾にそそぐ多摩川と荒川のゼロポイントを示しておきます。
次は「水源地」です。
言葉から連想するのは「実際に水が湧き出ている地点」ですが(そして、もちろんそれが正しいのですが)、険しい山に分け入って本当の水源を調べるのは、かなり骨が折れる作業です。また、河川によっては季節や天候によって水の湧き出るポイントが変わることもあります。そこで、国土交通省による河川現況調査では、「分水嶺」をその川の水源地としています。「分水嶺」とは、降った雨が流れ出す最高地点である山の稜線(とがった部分)のことです。これは、地形図中の等高線から決めることができるからです。
川は上流でいくつもの支流に枝分かれしますが、その川の長さを決めるのは、枝分かれした支流のうち「最も長い川の長さ」です。これを「本川」とか「幹川」といいます。信濃川は、長野盆地で犀川(飛騨山脈を源流とする)と千曲川(関東山地を源流とする)に分かれていますが、千曲川の方が長いのでこちらを本川としています。
ちなみに、川の「左岸」「右岸」って、どっち側なのか分かりますか?川の上流を向くのか下流を向くのかで、左右は逆になってしまいますよね。正しくは、上流から下流に向かって左側を「左岸」、右側を「右岸」と言います。