社会科よもやま話 その25 「筑駒」入試問題より

2020/6/25

エクタス社会筑駒

社会科担当の田島です。今回は御三家入試問題から離れ、筑波大学附属駒場中学校の2020年度入試問題を使って「寄り道」をしたいと思います。 毎度のことになりますが、ここでは入試問題を解説することはしません。入試問題に出てくることから、知識の幅を広げるような寄り道話(よもやま話)をしていきます。

筑駒の社会は、ご存じの通りほとんどが記号選択問題です。引っかけようとするいじわるな選択肢はまず見かけません。きちんと意味を理解しての知識、基本的な知識を応用して考えればたどり着けるような選択肢が中心です。また、「複数選択」や「すべて選択」が多いので消去法で何とかしようとしても通用しません。
筑駒・御三家すべての学校にあてはまることですが、受験生は基本的な知識をまずしっかりと吸収するべきです。そして、それらを根の張るしっかりとした知識にするために、日頃から関連情報(派生する内容)に引っかかりを持っていったり、枝葉を繋げていくような学習も必要になります。そのための考え方・思考回路の参考になればと思い、毎回このブログを続けています。

筑駒中2020年度入試問題の大問3は学校給食をテーマにした問題でした。文章の中で書かれている給食の始まりですが、もう少し詳しく書くと山形県鶴岡市にある大督寺の境内に作った私立忠愛学校が起源のようです。大督寺は浄土宗の寺院ですが、鶴岡内の寺院が宗派を超えて学校を建設したそうです。そして、お坊さんたちが近隣で托鉢をして得た食料を使って昼食を支給しました。この宗派を超えてというのがいかにも日本らしいとは思いませんか。他国では宗派の違いで争い事が現在も起きたりしています。もちろん、日本でもかつては宗派間での揉め事はありました。皆さんも平安時代末期辺りで学習した僧兵という存在や、戦国時代を思い出す人もいるでしょう。しかし、江戸時代以降は幕府の政策もあり、現在の寺院のイメージが定着しています。

日本で曹洞宗を開いた禅僧道元の言葉に「日常生活の全てが修行である」というのがあります。修行が大変厳しいことで知られる曹洞宗では、食べることも修行の一環として厳しく作法が決められています。食べる順序、お椀の持ち方や高さ、座り方、音を立てない、皆で同時に食べ終わるように調整するなど。
また、掃除をすることも大切な修行のひとつですから、総本山の永平寺はどこに入っても掃除が行き届いています。私が実際に永平寺を訪れた時、いくつもある長い廊下が乾拭きされていて、ワックスもつけていないのにピカピカだったのを覚えています。今は他の宗派でも同様の修行が当たり前になっていますね。

給食の話の寄り道で、掃除のことを書いたのは単に脱線させたわけではありません。学校生活の中で教室などの掃除がありますね。皆さん当たり前のようにしていますが、これも世界標準ではありません。たとえば欧米の多くの国では、掃除は掃除業者の人が担当します。子供は学習に来ているのだから掃除はそれ専門の人がやればよいという考え方。実に合理的です。
しかし、日本では自分たちが使う場所をきれいに清潔に保つということから掃除も教育のひとつなんですね。皆さんは「えーーー学校で掃除をしなくてもいい国なんてうらやましい!日本は道元のせいで(笑)掃除までさせられる」と思った人がいるかもしれません。でも、小さい時からみんなで使うところを汚さない、汚したらきれいにするという教育をされているから、日本の街は諸外国に比べてとてもきれいなんですよ。

外国からの旅行者、今ではインバウンドという言い方が定着しましたが、その旅行者が驚くのは、日本の街中にはゴミ箱がほとんど置かれていないということ。つまり、ゴミ箱がないのにも関わらずこんなに道がきれいなのは驚くべきことであるということです。これは日本人として誇りを持っていいのではないでしょうか。そして、それを保つように皆が心がけなければなりませんね。

さて、同様に給食ですが、これも日本は「食育」という言葉を使って教育のひとつにしています。道元の影響すごい(笑)。現在の給食の状況などは筑駒の文章にも書かれてあるので繰り返しませんが、外国ではどうなのでしょうか。全ての国を調べたわけではありませんが、欧米、特にアメリカやイギリスは、給食というよりもカフェテリアで、自分で食べたいものを注文して食べたり、メニューもどちらかというと日本でいうファストフードに近いもののようです。ハンバーガーやフライドポテトとか。フランスは美食の国らしくコース料理ではありませんが、前菜からデザートまで数種類の料理が出ているみたいです。でも、日本の給食の一汁三菜形式とあまり変わらないのかもしれません。アジアでは中国は家に帰って食べたり、校内の食堂で食べているようです。お隣り韓国は日本に近い給食スタイルです。栄養のバランスなども考えられている献立になっています。ただ、日本と違うのは、配膳などは専門の人(ボランティアなど)がいることと、教室ではなくランチルームで食べるようです。そして、完全無償だそうです。

それぞれのお国事情がありますから、どれが正しくてどれが間違ってるということではありませんが、こうして見てみると、日本の給食が徹底して教育の一環であることを感じますね。一番違うのは、献立の中身とかではなく、食べる前後の動きでしょう。
まず、きちんと栄養のバランスを考えた献立が毎回出ている。そして、食堂ではなく教室を食べる場所に変え整え、子供の手によって料理を運び入れ、配膳まで行う。皆で挨拶をして食事を開始して、皆で同じものを食べる(先生も同様)。今はコロナの影響で難しいですが、机を寄せ合って食べることで楽しさと共にマナーも身に付ける。そして、皆で挨拶をして食べ終わる。片付けも子供達の手で行う。
禅僧の修行の影響を受けていると言っても間違いではないでしょう。しかも、学校ではこの後、みんなで歯磨きまでするのです。皆さんにとっては当たり前の毎日でしょうが、世界的に見るとめずらしく、驚かれることなのです。単に食育ということだけでなく、日本古来からのマナーなども学んでいるのです。これは誇りにしてもいいでしょう。

また、給食は日本人全体の食材や料理の洋風化にも影響を与えていますね。戦後、GHQからの指示で、アメリカで余っていた小麦を持ち込ませることで給食がパン食になっていった。子供の影響で家庭でも給食の献立を真似て洋風化していったことなどです。

給食制度という公民分野だけでなく、食材や産地などの地理分野、歴史的にみて食事や掃除も修行の一環という考え方やGHQの影響など歴史分野としての側面も考えてみることが出来ますね。知識に幅を持たせ、立体的な知識の記憶をすることで、より実戦的な力を身につけるようにしてください。

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