2024年は、国内外を問わず多くの選挙が行われる年となりました。例えば国内では、7月に実施された東京都知事選で過去最多の56人が立候補したことなどが大きな話題を呼びました。海外に目を向けてみると、台湾の総統選やロシアの大統領選、インドの総選挙など、国際的な影響力のある国や地域での選挙が集中しています。特に11月に行われるアメリカ大統領選挙は、その結果がさまざまな世界情勢に影響を与えると言われており、世界中から注目を集めています。
さて、選挙が近づくと話題になるのが「投票率」の問題です。日本の国政選挙ではここ10年、投票率が60%を下回る状態が続いており、特に若年層の投票率の低さが問題視されています。平成28年の武蔵中学校の入試問題でも、全体の投票率の低さや、若年層の投票率の低さがどのような問題を引き起こすかを問うものが出題されていますが、そのころから状況があまり変化していないのは残念なことです。そこで、有権者が投票に行けない・行かない要因を少しでも減らすために、さまざまな取り組みが行われてきました。期日前投票の期間延長や、投票所をデパートや商業施設など人が集まりやすい場所に設けるなどの制度改革はその一つです。また、各政策に対する意見(賛成・反対の程度)などを入力すると、自分の政治志向に合った候補者や政党が表示されるインターネットサイトも作られており、投票先を迷っている有権者の参考になりそうです。
一方、投票そのものの制度改革や意欲喚起だけではなく、投票に付随した楽しみを設けようという取り組みもあります。例えば近年広がっているものに「選挙割」があります。これは、投票後にもらえる投票済証明書か、投票所の看板と一緒に写っている写真を見せると割引やサービスが受けられるというもので、導入する企業や店舗が徐々に増えてきています。海外ではさらに面白い事例が見られます。オーストラリアでは選挙の際、投票所の近くにさまざまな食べ物の屋台が出て、有権者やその家族を楽しませてくれるのです。特に、焼いたソーセージをパンにはさんだものが有名で、「デモクラシーソーセージ」と呼ばれています。どこの投票所で何が食べられるのか、またどこの投票所のソーセージがおいしいかなどをまとめた情報も出回るなど、関心の高さをうかがわせます。オーストラリアは世界でも投票率の高い国として知られており、90%以上になることも珍しくありません。その背景には、投票しやすい選挙制度の仕組みづくりに加え、投票が国民の義務とされており理由なく棄権した場合には罰金が取られるから、ということももちろんありますが、選挙が国民にとって楽しみのあるイベントになっていることも大きな要因だと思います。さらに、この方法であれば選挙権がない子どもでも楽しめるため、幼いころから投票所に行くことが習慣として身に付きやすい、という利点もあるのではないでしょうか。
10月27日には衆議院議員総選挙が予定されています。先月末の自民党総裁選を経て10月1日に首相が交代してから1か月足らずでの選挙となるため、候補者や有権者のみならず、選挙に関わる全ての人が準備を急いでいることと思います。このような短い準備期間であっても、少しでも投票に行きたくなるような取り組みはきっと行われるはずです。みなさんもぜひ関心をもってみてください。