社会科よもやま話 その20 御三家入試問題より

2019/6/3

エクタス社会開成中

 前回3月からだいぶ間が空いてしまいました。最近は執筆者も増えてきたための順番待ちです!
前回は2019年度開成中学校の入試問題にあった「東叡山寛永寺」からの寄り道で,日本の仏教がどのように発展し,変化してきたのかを書きました。前回の最後に予告しておいた「比叡山延暦寺」と「高野山金剛峯寺」を訪れた時の感想などを書き散らしていきます。

皆さんも知っているとおり「比叡山」は天台宗の総本山で開祖は最澄です。「高野山」は真言宗の総本山で開祖は空海です。

まず「比叡山延暦寺」ですが,現在では高野山とは比べものにならないぐらいアクセスの良い場所にあります。元々,平安京を造営したとき鬼門に当たる場所に建立したのが延暦寺ですから,国際観光都市である京都から交通手段を使えば目と鼻の先です。
(因みに江戸幕府の鬼門に当たる場所に造られたのが「東叡山寛永寺」です。名前からも明らかに比叡山を意識したものだとわかります。)

ここに僧籍を置く修行僧にとっては,前回書いたような過酷な修行を頂点に日々修行に励んでいるわけです。でも我々物見遊山の観光客にとっては,日本最長を誇るケーブルカーに乗り2,025mの距離を登れば,ふもとからたった11分で延暦寺に到着できます。ちなみにケーブルカー終着駅の標高は638mで,東京スカイツリーよりも少し高い位置にあります。
休日には外国人を含めた多くの観光客で賑わいます。そのためどうしても観光地としての雰囲気が充満しているのは否めません。ただ,比較的平地にある寺院とは違い,参道としてのエリアがほとんどないため,お土産物屋さんとかが賑わっているという感じではありません。その代わり,比叡山エリア内に観光客向けのホテルがあったりします。
こういった観光地化を別とすると,やはり比叡山は霊山としての威容があります。3つのエリアに分かれていて,今はバスなどで移動が出来ますが,そうでない時代はやはり山道を歩いたでしょうし,現在でも前回書いた修行中の僧侶は自らの脚で移動しているはずです。

次は「高野山金剛峯寺」です。
こちらは和歌山県の高野町にある一大宗教都市といっても差し支えないエリアです。比叡山に比べると観光のついでに訪れるような場所にはありません。鉄道を利用する場合,たとえば,大阪(南海電鉄)から最も早い電車でも90分ほどかかります。道中の4分の1ぐらいは山岳鉄道のような急勾配を登っていく鉄道です。終点の「極楽橋駅」まで行き,そこからさらにケーブルカーで登ります。所要時間は5分ほどですが,高野山駅の標高は867m。比叡山よりも200m以上高いところになります。
和歌山県北部で周囲を1,000m級の山で囲まれたところへ,若いときに修行していた場所であるとはいえ,これだけの平坦地を見つけた空海はやはりすごい人です。そしてさらに,その弟子たちによってここに一大宗教都市を完成させたことにも驚きます。空海の後,一時衰退していたとはいわれますが,これだけ不便な山中での弟子たちの努力は並大抵のものではなかったでしょう。

ここは町自体が境内となっていて48,295坪もあるそうです。そこには,117の寺院だけでなく,一般の人びとの住居,小・中学校,高校,大学まであります。派手な看板をつけていないコンビニもありました。あの全国チェーンのコンビニです。もし観光で訪れ宿泊する場合は,ホテルなどありませんので宿坊といって参詣者を泊めてくれる寺にお世話になります。もちろん有料です。こういった環境ですから,たとえ物見遊山の旅行者であっても,ついでではなく,ここを目指して訪れることになります。最近は外国人観光客も多くなっているようで,私が訪れた時も東洋,西洋を問わず多くの外国人がいました。でも,賑わっているという感じではなく,静かな町でした。
比叡山は寺と寺を繋ぐ道もアップダウンが多かったのに比べて,高野山は標高が高いのに平坦地ですから歩きやすい土地でした。

空海がまつられているのが「奥の院」とよばれている場所で聖域です。高野町の東端にある「一の橋」を渡っていきます。途中,「中の橋」をわたり,歴史上の人物の墓地が多く並ぶエリアを進むと,最後に「御廟橋」を渡ります。ここからは撮影はおろか,飲食も禁止で,服装もきちんと整えなければならない清められたエリアになります。たしかに空気が澄んでいることもあるでしょうが,独特の緊張感が支配している聖域といってもいい場所になります。その一番奥に,空海が入定された御廟があります。空海はいまだここで生きて瞑想しているという信仰があるので,午前中1日2回の食事が運ばれます。1200年間毎日欠かさず行われている儀式です。基本的には肉や魚を用いない精進料理ですが,現在ではそういった材料を使ってパスタやカレーライス,デザートなども運ばれているようです。

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