今年3月,国立公園が一つ増えたことはご存知でしょうか。
上信越高原国立公園の一部が分離され,妙高戸隠連山国立公園となりました。
昨年の慶良間諸島国立公園に続く指定で,これにより国立公園の数は32か所となりました。
そもそも国立公園とは何でしょうか。
自然公園法では「国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地」と定義されており,環境省が管理しています。
ちなみに,日本で最初の国立公園は1934年に指定された瀬戸内・雲仙・霧島の三つです。
実は,中学入試でも国立公園に関する出題が少しずつ増えてきています。
2007年に政府の中央環境審議会によって発表された「第3次生物多様性国家戦略」の中に,すべての国立公園・国定公園の指定見直しなどが盛り込まれ,実際にここ数年で新たな指定や範囲の変更などが相次いだことが,先生方の関心を呼んでいると思われます。
一方,今年7月,「明治日本の産業革命遺産」が新たに世界文化遺産に登録されました。
昨年の「富岡製糸場と絹産業遺産群」に続く登録で,これで国内の世界遺産は19件となりました。
世界遺産とは,地球の自然活動によって形成された貴重な環境や,人類の歴史によって生み出されてきたさまざまな文化遺産を未来へ伝えるために,1972年にユネスコ(国連教育科学文化機関)の総会で採択された「世界遺産条約」に基づいて指定され,2015年現在,世界で1031件が登録されています。
世界遺産に関する出題は,中学入試でもすっかり定番となった印象で,中には筑駒中の2014年度入試で出題された富岡製糸場のように,正式な登録に先がけて出題する学校も出てきました。
そもそも,2000年ごろまで
中学入試の出題といえば国立公園が主流でした。
ところが,原爆ドームや合掌造り集落など,
日本の物件が次々と世界遺産に登録されると,
一気にこれに関連する出題が増えてきました。
この流れを考えると,出題のターゲットが
再び国立公園の方に向いてきてもおかしくはありません。
何も,ただ単に「世界遺産はどの受験生もよく学習しているから国立公園を出題しよう」というわけではありません。
新たな指定や範囲の変更が続いている以外にも,国立公園に注目すべき話題がいくつかあるのです。
まず,国立公園内では自然環境の保護の観点から,開発が大きく規制されてきました。
火山大国と呼ばれる日本ですが,そのほとんどが国立公園内にあることが,地熱発電の普及がなかなか進まない理由となっていたのです。
しかし,国が2012年に地熱発電のための掘削を条件付きで容認する方針を発表しました。
国のエネルギー政策も大きな転換点を迎えている今,自然エネルギーと関連付けた出題が増えると予想されます。
そもそも,桜島・箱根・阿蘇山など,ここのところ火山活動が活発になってきた地域は,どこも国立公園の範囲内です。
さらに,東日本大震災によって甚大な被害を受けた三陸海岸のうち,岩手県の太平洋岸はもともと陸中海岸国立公園と称されていましたが,この三陸地方の復興を支援し被害のようすを後世に伝えるために,新たに青森県南部から宮城県の牡鹿半島まで範囲を拡大して,三陸復興国立公園となりました。
このように,国立公園をめぐるさまざまな動きがここ数年見られますから,中学受験生の皆さんには,世界遺産だけでなく国立公園にも注意を向けて学習してほしいと思います。
かつて日本各地の温泉地や景勝地に
たくさんの観光客が訪れた時代は過ぎ,
これからは山・森・川・海と人間との関わりを意識しながら,
自然と向き合っていく時代です。
そのために,国立公園は重要な役割を担っているのです。