成長マインドセットと自己決定理論の活用法
教育心理学における二つの重要な概念、成長マインドセットと自己決定理論(SDT)は、子どもたちの学習と成長に大きな影響を与えることが知られています。これらの理論を理解し、算数学習に応用することで、生徒たちの学習意欲を向上し、さらなる成功を促すことが可能です。筑駒・御三家・駒東中学を目指す方、グローバルな視点でトップ層を目指す方は低学年の学習でこれらの理論の効果を経験し、役立てていかがでしょうか。
成長マインドセットとは?
成長マインドセットは、スタンフォード大学の心理学者キャロル・D・デュエックによって提唱された概念で、能力は固定されているのではなく、努力と学習を通じて改善できるという信念に基づいています。このマインドセットを持つ人は、困難に直面してもそれを成長の機会と捉え、挑戦から逃れることなく、継続して努力する傾向があります。学習において成長マインドセットを低学年で促進することは、将来数学的思考等を超えた課題や困難に直面した際に、生徒が諦めることなく解決策を探求する姿勢を育てるのに役立ちます。
高学年になり「学習が苦手」という意識が一旦高まってしまった方は、成長マインドセットを獲得することが難しくなるかもしれません。成長マインドセットは低学年のうちに確立しておきたいものです。そのお役に立ちたいと考えております。
自己決定理論(SDT)とは?
自己決定理論は、リチャード・ライアンとエドワード・デシの心理学者が提唱した理論で、人が内発的にモチベーションを持って行動するためには、三つの基本的な心理的ニーズ(自律性、有能感、関係性)が満たされることが重要であるとしています。自律性は自分の行動や選択に対するコントロールを感じること、有能感は自分の行動が効果的であると感じること、関係性は他者とのつながりや属する感じを持つことを意味します。教育の文脈では、これらのニーズを支えることで、生徒が学びに対してより積極的で自発的な姿勢を示すようになります。低学年の時期に、心理的ニーズ(自律性、有能感、関係性)が満たされ、積極的で自発的な学習姿勢を持つ経験は、極めて貴重であると実感しています。4年生以降できる限り自律して学習できるようになる礎となるものです。(高学年の最上位生においても特に男子は、完全な自律学習はまだ難しいと思いますが、可能な限りの自律は大切です。)
教育方法と具体例の適用
これらの理論を具体的に算数教育に適用する方法としては、以下のようなアプローチが考えられます:
■成長マインドセットの促進
- 課題解決: 「まだ解けないが、解けるようになる方法を見つけよう」という前向きな姿勢で、問題へ取り組んでみましょう。
- 成功体験の共有: 他の生徒の成功例を共有し、具体的な努力がどのように成功につながったかを明確にします。これはご家庭だけでは難しいかもしれません。エクタスでは各教科の学習内容や学習方法について、さまざまな成功事例が蓄積されています。エクタスでクラスの友人が算数オリンピックなどでメダル獲得した経験を共有するなどもよい影響となるでしょう。
■自己決定理論の適用
- 選択肢の提供: 家庭では算数のどの問題から取り組むか自由に選べるようにし、学びの自律性を支援します。保護者の方は生徒自身の選択を手助けするというスタンスです。
- 目標設定: 生徒自身に小さな目標を設定させ、それを達成するための計画を立てさせます。
- フィードバックの強化: 定期的なフィードバックを通じて、生徒が自身の進歩を把握できるようサポートします。(エクタスでは低学年の授業内で個人別にフィードバックを行います。結果ではなくプロセスに重点をおいて即座にフィードバックしています。)
これらの原則を組み合わせることで、上位5%の優秀な生徒が、算数を含む学習全般に対してより深い理解と関与を示すようになり、その潜在能力を最大限に引き出すことが期待できます。