今回は2019年度の筑駒の入試問題(大問2)に注目してみます。
(1)~(3)まで出題があるのですが,筑駒らしく,(1)は比較的すんなりと解答でき,(2)もなんとかがんばれば正解できます。ですがここまでを力任せに解いてしまうと(3)は正解しきることは難しいのではないでしょうか。実はこの問題を教材として捉えた際に、重要なのは(3)ではなく(2)なのです。その(2)をどう考えたかで(3)の成否に大きく影響します。そんな訳で、ここでは,(2)だけ簡単に取り扱います。

実際に気合いでなぞり始めてしまうと,すべての場合を探しきることは厳しそうです。もう少し工夫すれば,対称性に注目するなども見えてくるかもしれません。ですが,そもそもの題材や背景をもう少し考えてみましょう。『Aからすべての線をなぞってAに戻る』という表現はどこかで聞いたことがありませんか?
そうですね,これは『一筆書き』で使われる表現です。その視点をもって考えてみましょう。
(2)で使われる形,いわゆる『田んぼの田』が一筆書きできない形であることは有名です。そして,一筆書きができるかどうか,は各頂点に集まる辺の本数で決まります(もし知らない場合はこの後必ず調べてみましょう!)。
実際に図に書き込むと次のようになります。

3と書かれた点【=奇数の点】が4つあるので一筆書きはできません。
3と書かれた点【=奇数の点】が0や2つであれば一筆書きできます(この場合は点Aがスタートとゴールに決められているため,3と書かれた点【奇数の点】は0にしないといけません)。
つまり,図の3と書かれた頂点同士を結ぶ新たな線を考える問題,と言い換えることができます。そのために新しい道を辺にそって4本書き加える問題,となるわけです。
その年の入試の中で一番難しい問題が注目されがちですが,受験生にとってはこのような問題の方が,合格者と不合格者との間に差がつく問題とも言えそうです。こういった(1)から順につながりを持ちながら難度を上げていく出題は,算数の中学入試ではよく見かけます。筑駒や麻布を志望している皆さんの場合はすぐにわかると思います。教室でも,こういった問題で『先生,(3)がわかりません,質問です』といった場面はよくあるのですが,よくよく聞いてみると,問題の背景には気づかず結果として(2)までは○がついていただけ,というケースが大半です。×の問題をやり直す,ということはとても大切ですが,その×の原因を考えると,もっと他に気にしなくてはいけないことも見えてきますし,そういった視点を忘れずに日頃から学習している方が算数を楽しめると思います。
因みに,上の(2)は7通りあるのですが,その7通りをどのような決まりで書き出すのか,がむしろ重要です。開成や武蔵ならその書き出しの形での入試になっているかもしれない問題です。そして、この(2)を正しく見通すことができたのであれば、その後の(3)も比較的気持ち良く解くことができるはずです。