小2で覚える「かけ算九九」ですが、今から1200年~1300年ほど前の奈良時代以前に「かけ算九九」が使われていた記録が残っています。特産物や地名の由来を諸国から集めた『風土記』と同時代に、様々な階級の歌を過去に遡って集めて編纂した『万葉集』の中に見られます。
まだ、ひらがなもカタカナもなかった時代に、かけ算を楽しんでいたようです。
『万葉集』およそ4500首の中から戯訓として使われれているものは、
907首 「二二」と書いて「し」
946首 「奈重二」と書いて「なし」
2710首 「二五」と書いて「とを」
239首・379首・926首・1804首・3278首
「十六」と書いて「しし」(獣)(鹿)(猪)
789首 「情八十一」と書いて「こころぐく」(心ぐく)
1495首 「八十一」と書いて「くく」 (潜く)
3330首 「八十一里」と書いて「くくり」(括り)
2542首 「二八十一」と書いて「にくく」(憎く)
3242首 「八十一隣」と書いて「くくり」
196首 「三五月之」と書いて「もちづきの」
これは望月=十五夜からきています。
算数でおなじみの特殊算。つるかめ算は「求差分和門」として今から300年くらい前の「算学啓蒙諺解大成」という書物に載っています。もともとは中国の「算学啓蒙」という数学書を翻訳したもの。当時はつるかめ算ではなく「二率分身」と呼ばれていたそうです。
掲載されている問題は「今有鶏兎一百、共足二百七十二隻。只云鶏足二兎足四。問鶏兎各幾何。」
現代文にすると「今、にわとりとうさぎが合わせて100羽いて、足の合計が272本です。にわとりは足が2本でうさぎは足が4本です。それぞれ何羽いますか。」
なんと問題の次のページに面積図を用いて解説しています。
しかも全部うさぎだったときの面積図と全部にわとりだったときの面積図が上下に並べてあり、2通りの解説をしているのです。
ちなみに、生類憐みの令で有名な江戸幕府第五代将軍徳川綱吉のころの出版です。
呼び名はつるとかめが縁起が良いということで後に変化したのでしょう。