低学年向け算数パズルの定番のひとつに,新聞紙の問題があります。「新聞紙をばらばらにしてそのうちの1枚を手に取ったところ,左右にかかれているページ番号が11と26でした。この新聞は何枚の紙からできているでしょうか。」といった類の問題です。初見の場合,これはなかなかに手ごわい問題です。
例を作って考えてみましょう。1枚の紙からできている場合,左右にかかれているページ番号の組は(1,4)か(2,3)です。2枚の紙でできている場合であれば,(1,8)(2,7)(3,6)(4,5)となります。どちらの場合でも,左右のページ番号の和が等しくなっていますね。また,その和から1を引くと全部で何ページあるかがわかり,それを4で割れば紙の枚数を求めることができます。したがって,{(11+26)-1}÷4によって,上にあげた問題の答えは9枚であるとわかります。
新聞紙の問題の難しさはどこにあるのでしょう?仕組みを見つけることは子どもたちの得意分野ですから,和が一定であり,1を引いてから4で割ることに気付くのはそう難しいことではありません。やっかいなのは,以上のような仕組みを発見するために,例を作らなければならないところにあります。問題用紙にかかれていることからいったん離れて,シンプルな例から考えていく,という「遠回り」は,子どもたちには中々できないのです。
「遠回り」は最難関中学の算数を解くためにも大変重要です。初見タイプの問題の論理構造や規則性を発見するためには,いったん最も簡単な例から順に考えることがしばしば有用です。例えば,今年(2015年)の桜蔭中では,正三角形を決まりに従って並べていく問題が出題されました。設問で問われているのは15番目と17番目の正三角形ですが,1番目の正三角形から順を追って調べていかなければきまりを見つけることはできません。限られた試験時間の中で落ち着いてこのような遠回りをするためには度胸も必要になってきます。Festina lente(フェスティーナレンテ=急がば回れ),エクタスではジュニア期から種をまき,6年生の過去問演習で仕上げるようにしています。