試験時間40分 満点100点
随筆文1題8問 説明文1題8問
大問1 随筆文 出典は梯(かけはし)久美子『好きになった人』所収「風船スケーターの不条理」から。
筆者がたまたまテレビをつけたら、フィギュアスケートの大会の様子が映っていました。そこで筆者は懐かしさがこみあげてきます。
筆者が小学4年生の1972年、札幌オリンピックが開催されました。開会式が一か月後に迫ったある日、担任の先生が言います。「オリンピックの開会式に札幌市内の小学生が参加できることになりました。風船をもって滑り、最後に空に飛ばします。転ばないで百メートル滑ることができるのが条件です」 筆者は迷った末に、手を挙げませんでした。
開会式当日、筆者は一人でテレビを見ていました。風船スケーターが登場し、ドキドキしながら見ていた瞬間、一人の子が派手に転びました、そのシーンはその後、ほほえましく可愛らしい映像としてたびたび繰り返されました。
転んでもよかったんだ。そんなの話が違うじゃないか。思えばあれが、世の不条理に初めて触れた経験だったように思いました。
問6では、迷った末に私は手を挙げなかった筆者の気持ちの動き説明します。問8では「裏切られた気持ち」とはどのような気持ちか説明します。
筆者は、本当は開会式に参加したかったが、絶対に転ばずに滑れるという自信はなく、大事な本番で転んだら大変なことになると思い、参加をあきらめました。ところが、参加をあきらめたのに、実際は本番で転んだ子の映像がほほえまししいと評判になったので、話が違うと不条理を感じ、納得いかず、くやしい思いをしたのですね。子どものころのほろ苦い思いも、大人になったらよい思い出です。どこか共感を覚える随筆文でした。
大問2 説明文 出典は高橋敬一『昆虫にとってコンビニとは何か?』より、「昆虫にとって自然保護とは何か?」から。
自然保護という言葉から、二つのタイプに注目します。一つ目は危機感から生じる自然保護です。この場合の危機感とは、人間の生存にとって最低限必要な資源および環境を確保するという意味での自然保護となります。もう一つは、ノスタルジック、遠くは離れた故郷や、遠い過去の時をなつかしんであこがれる感情に基づく自然保護です。このノスタルジック自然保護は、人類の誕生以前の自然は関係なく、自分が見てきたものにこだわるため思い入れや重要度が人によって異なり、若い世代に強要する特徴があります。自然保護運動家はともかくも保護、保護と叫ぶが、保護すべきであると主張する種が本当に「すべき人にとって」重要であるからではけっしてなく、ただ自分が生きてきた環境へのノスタルジーがそうさせているにすぎないと筆者は述べます。
問5では「人間の『やさしい』ふるまい」という表現から筆者のどのような批判が読み取れるか説明します。問8では文章冒頭の二つのタイプの考え方をそれぞれ20~30字で記述します。
「環境にやさしい」と言っても、あたかも人間とほかの生物とが仲良く共存する世界が実現可能であるかのような印象を受けます。しかし実際には、生物界には本来生存競争しか存在せず、人間も自身の都合だけを考えて生きてきたと、筆者は文章中で批判しています。自然保護に対する考え方と筆者の主張を読み取る説明文でした。
女子学院中は過去にも自然と人間をテーマにした説明文が多数出題されています。文章を正確にとらえ、解答していきましょう。(佐藤)