試験時間50分 満点100点
説明文1題4問 物語文1題7問
解答形式 字数制限なし
大問1 説明文 出典は稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密』から。この出典からは、他にもラ・サール、鷗友学園女子、大妻、筑波大附など、多数の中学校で出題されました。
ⅠとⅡの2つの文章から問題ができています。
Ⅰ オオカミは恐ろしい動物と言われていますが、家族思いのとてもやさしい動物です。人間はどうも一面を見て判断してしまいがちで、他人のことも「〇〇な人」と判断してしまいます。①本当の自分らしさをさがすときには、皆さんの周りにまとわりついている「らしさ」を捨ててみることが必要なのです。②筆者は雑草と呼ばれる植物に心惹かれます。雑草は図鑑通りではないところが魅力だと述べます。
Ⅱ 古代中国の思想家・孫子は「戦わず勝つ」と言いました。モモンガはリスに比べると木登りが上手とは言えませんが、木の上から見事に滑空することができます。生物は「戦わない戦略」を続け、進化の歴史の中でナンバー1になれるオンリー1のポジションを見出しました。
問2では、①のように言う筆者が、②のように言う理由を説明します。 問3では、私たちが「戦わずに勝つ」ためにはどうすればよいか、本文の内容にそって説明します。 問4では、オオカミとモモンガの例はどのようなことを伝えたいか、それぞれ説明します。
人間の脳は複雑なことは嫌いで、物事の一面を見て判断しがちですが、人間は様々な面を持ち、単純ではありません。自分「らしさ」を求める際、周囲から見た「らしさ」にとらわれ、本当の自分「らしさ」を見失ってしまう場合があります。そう考える筆者には、人間が勝手に書いた図鑑など気にせずに自由に生えている雑草の姿が痛快で、うらやましく思えたのですね。また、「戦わずに勝つ」ためには、苦手なことから逃げてもよいが、苦手なことにも挑戦して自分の意外な適性を探り、最終的に勝ち負けにとらわれない唯一無二のポジションを見つければよいのです。生き物の生態・進化の例をもとに、人間の生き方を説いた文章でした。
大問2 物語文 出典は森絵都『あしたのことば』所収「あの子がにがて」 2020年11月新刊からの出題でした。
小学5年生の水穂は、愛犬のタロに話しかけます。クラスに中沢真紀ちゃんという苦手な女子がいること、真紀ちゃんと同じグループにいても水穂は無口になってしまうこと、真紀ちゃんがそばにいると時間が経つのがおそく感じること、水穂が軽いギャグを言っても、真紀ちゃんに真面目に反論されてしまったこと。水穂はそのうっぷんを塾仲間のミーヤンにぶちまけました。ミーヤンは「馬が合わへん、ちゅうやっちゃ」と言ってくれました。馬が合わない。水と油。虫がすかん。水穂は頭の中でくり返しているうちに元気になっていきました。そしてタロにも言い聞かせます。「あんた、浅木さんところのクリストファーがにがてやろ。柴犬のあんたと、アフガンハウンドのクリストファーは、いもようかんと
くらいかけはなれとる。『犬猿の仲』なんや」
問3では、 に当てはまる言葉を想像して答えます。 問5では、ミーヤンと話をすることでホッとする理由を説明します。 問7ではなぜタロに言い聞かせたのかを考えて答えます。
水穂は、はっきりと分からないが、苦手だった真紀ちゃんとの関係が、馬が合わない、と心のなかで何回も繰り返すうちに、だんだんとはっきりとしてきて納得でき、少しずつ心が軽くなっていきました。また、慣用句が作られるほど、生まれつきの相性は仕方ないものであり、苦手なクリストファーに腹を立てても無駄だとタロに言い聞かせることで、自分も真紀に腹を立てたときは、自分たちは犬猿の仲なのだから仕方ないとわりきり怒らないようにしようと自分自身を諭したのですね。水穂の悩み、気持ちの変化を直接的かつ論理的に説明する物語文でした。皆さんも にはどのような言葉が当てはまるか想像してみてださいね。
以上、お読みいただきありがとうございました。今後もさまざまな国語文章に触れ、学習に取り組んでいきましょう。(佐藤)