最近、政治家の失言がニュースになることが多々あります。今に限らず、昔からそうした失言で場合によっては辞任に追い込まれる、などということも繰り返されてきました。先日引退を表明したフィギュアスケートの浅田真央選手が、オリンピックの演技で転倒した際、「真央ちゃんは肝心なところで必ずこける」と談話して、世間から大きな非難を浴びた元首相などは記憶に新しいところです。
それらの失言の多くは、ちょっと考えれば問題になるであろうとわかりそうなものばかりですが、なぜこうも繰り返されるのでしょう。様々な理由はあるでしょうが、国語科の人間として思うことは「書きことば」と「話しことば」の違いです。
国会のような場での質問は、事前に質問内容を伝達しておくため、回答する側のおおよその答えは事前に作っておくそうです。なので、しっかりした「書きことば」に近い内容で受け答えができます。ところが、記者会見等では記者からどんな質問が飛んでくるかわかりませんので、質問されたことに対する回答はその場で考えるしかありません。したがって答えを事前に準備できるはずもなく、その場で考えたもの、つまり限りなく「話しことば」に近い答えをするしかないわけです。
記述問題に取り組むときの皆さんの思考回路は、上記の「国会答弁」型でしょうか?それとも「記者会見」型でしょうか?
ここで言う「国会答弁」型とは、いきなり書き出すのではなく事前に書く材料をある程度そろえておいて、書きことばにしてまとめている人です。それに対して「記者会見」型とは、思いついたことを、そのまますぐに書き出してしまう人です。「記述がどうしても不得意のまま…」という人は、圧倒的に後者が多いのではないでしょうか。
文章を書くことを仕事とする人、例えば作家や新聞記者などは、何回も自分の書いたものを読み直し手を加え(これを推敲(すいこう)と言います)、自分でも本当に納得できるものになったものを初めて「清書」しています。皆さんの記述問題に対する答えは、まさにその「清書」でなければならないはずです。
以下は、通常授業時に生徒たちに話している『記述の手順』です。
①設問を精読し、「何を」「どのくらい」書くことを求められているか、を理解する。
②解答に必要な「材料」を箇条書きにしながら、解答になる「大きな柱」を決める。
③その「柱」に、箇条書きしておいたものを条件に沿うようにつけたしていく。
④誤字・脱字、文法・文末ミス、表記ミス等がないか、読み直して確かめる。
日頃から、こうした手順で記述をまとめるようにしていますか?
話しことば・書きことばの違いは、手紙と電話にたとえられることも多いです。手紙は届くのに時間がかかる半面、納得がいくまで何回でも書きなおせます。一方電話は、思い立った瞬間に相手に伝えられるが、一回言ってしまったことは言い直しがききません。
受験生の皆さんが今後記述問題を解く際は、「国会答弁」型で上記①~④の手順を意識して取り組むようにして下さい。