皆さんはマンタという魚を知っていますか?
大きな水族館だとその幅広いからだをゆっくりとはためかすようにして泳ぐ姿を見ることができますから、実際に自分の目で見たことがある人も多いのではないでしょうか。そのマンタの仲間にナンヨウマンタという種類のマンタがおり、大きいものでは横幅が5mを超えるものがいるそうです。そしてナンヨウマンタは熱帯の海で集団をつくり生活をしていることが知られています。
そのナンヨウマンタを5年にわたり観察をし、行動を研究した成果が8月に発表されました。ナンヨウマンタの集団は、ただ集まっているだけのものではなく、「知っている個体と付き合い、そうした個体との社会的な触れ合いを覚えている」ということが分かったそうです。少し難しい言い方ですが、簡単に言うと知り合いのマンタと一緒に行動したがる、つまりマンタには友達がいて、その仲間と集団をつくり生活をしているようだ、ということです。
ナンヨウマンタは腹にそれぞれ違う模様があり、それぞれの個体を識別することができます。そこで研究チームは、600匹にもおよぶ個体を確認し、どのマンタとどのマンタが一緒に行動していたか、などを調べてまとめました。その観察は実に3400回近くも行われたそうです。その研究のおかげで、マンタは2種類の社会的な集団をつくっていることが分かりました。1つはメスだけの集団だったそうです。もう1つは、オス、メス、子供の集団だったそうです。そしてマンタは自分が知っている個体、つまり知り合いのマンタと一緒に行動をしていることがわかりました。つまりナンヨウマンタは実はとても社交的で、社会性がある集団をつくっているようだと考えられるのです。
マンタに、このような社会性があるとはこれまで誰も考えていませんでした。しかし5年にもわたる地道な研究によって、少しずつ本当の姿が分かり始めています。何事も思い込みで決めつけるのではなく、実際に調べてみることが大切だと分かりますね。このことは研究だけではなく、日々の生活でも大切なことだと思います。どのようなことでも自分勝手に決めつけて何も行動をしない、ということの無いように、皆さんも自分の行動を一度振り返ってみるのもいいのではないでしょうか。
さて今回の研究の成果により、ナンヨウマンタはかなり知的な動物かもしれない、ということが分かりました。これからの研究でさらに新しい事実が解き明かされていくかもしれませんね。そう考えると次の研究の成果もとても楽しみになりますね。