先日、「ミツバチの特性についての実験が行われた」というニュースがありました。
1963年、オーストリアの昆虫学者が、「池の上を飛ぶミツバチは、池に波があるときは難なく飛行できるが、波が全くない状態のときは、うまく飛行できず池に落ちてしまう」ということを発見しました。
そして、「どうやらミツバチは目に見える情報を手がかりに飛行している」と考えてきたのです。
この発見から約60年後の2022年3月、フランスのある研究チームがさらに詳しい実験を試みました。どのような実験をしたのか、皆さんは想像できますか?
手がかりとしては「波が全くない状態のときはうまく飛行できない」ということです。
波が全くない状態とは一体どのようなものでしょうか?
お風呂などの水は波がありませんので、それをじっと眺めてみると、自分の顔が映りますよね。
ということは、波が全くない状態とは鏡のようになっている状態ということになります。
そこで、今回の実験は、長さ220cmの天井と床が鏡張りになった明るいトンネルで、ミツバチを飛行させました。
天井と床にあるそれぞれの鏡はおおいでかくせるようにもなっていて、比較対照ができるようになっています。
また、エサとしてトンネルの反対側に砂糖水を置きました。
<実験1>まず、鏡をおおいでかくしたトンネルで、ミツバチを飛行させてみました。
結果は、難なく砂糖水までたどり着きました。
<実験2>次に、天井のおおいをなくし、鏡にしてミツバチを飛行させてみました。
結果は、<実験1>と同じく砂糖水までたどり着きました。
<実験3>天井におおいをして、床のおおいをなくし鏡にしてミツバチを飛行させてみました。
結果は、スタートから40cmほど飛行したところで、床にぶつかりました。
<実験4>天井と床の両方のおおいを外して鏡にしてミツバチを飛行させてみました。
結果は・・・・どのようになると思いますか??
答えは、<実験3>より手前(スタートから8cmほど飛行したところ)で、床にぶつかりました。
以上のことからどのようなことがわかったのでしょうか?考察してみましょう。
<実験3>の床が鏡張りの場合は、トンネル内の下方向の高さが2倍に見えるので、ミツバチは床までの高さがわからなくなり、床にぶつかったと考えられます。
また、<実験2>の天井が鏡張りになっているときは、上方向の高さが2倍になっても砂糖水までたどり着いたので、これら2つの結果より、床側、すなわちミツバチの腹側の視界が飛行には関係あることがわかります。
さらに<実験4>では、高さが無限になるので、より高度がわからなくなり<実験3>より飛行できず床にぶつかったと考えられます。
以上より、研究チームは「ミツバチは腹側にある視覚的な手がかりを利用して飛行している」と結論づけました。
それをさらに裏付ける実験として、次のようなことを行いました。
<実験5>トンネルの前半部は天井と床の両方をおおいでかくし、後半は両方のおおいをなくし、鏡張りにしてミツバチを飛行させてみました。
結果は、前半部は飛行できましたが、おおいがなくなった後半部から床にぶつかりました。
まだまだ私たちのまわりには解決できていないことがたくさんあります。
そして、疑問にすら思っていないこともあると思います。
日頃から疑問に持つことを習慣にして、「なぜそうなるのだろう」と考えながら生活していくと、科学力は伸びていくことでしょう。
では最後に、飛行しているミツバチを明るい箱に入れて、明かりをなくすとどのようになりますか?
ぜひ考えてみてください。