大問1 地学 気象
今年の出題範囲は、「気象」でした。衛星写真(雲の様子)と気温、湿度についてのグラフの読み取りがメインとなっていました。A問題は冬の天気を表す代表的な写真、B問題は台風の連続写真でした。どちらもこれらにグラフをからめて出題されており、グラフと天気図がつながらない生徒は苦戦を強いられたのでは無いでしょうか。
これらのグラフを判断するために、余計な時間を使わず、ポイントだけを見ながら解答をつくりあげていった受験生は、無駄に時間を使うこと無く進むことができたでしょう。
よく練られた良問です。桜蔭は、注目すべきグラフの変化に気づくことのできる生徒を迎え入れたかったのでしょう。
普段から情報を読み取り、他の形式(例えばグラフ)への変換する力、図や写真の特徴を読み解く力を鍛え上げていく練習をしていた受験生はどれぐらいいたでしょう。その力はただ反復学習をしているだけではつくりあげることのできないものなのです。
桜蔭の地学分野の特徴として、天体、気象に関する出題が多くみられることがあげられます。天体、気象のどちらも図、写真、グラフを正しく読み取り、処理し、考察するタイプの問題です。2013年度の彗星、2008年度の火星大接近のような時事に関する内容の出題も目が離せない出題形式のひとつとなっています。処理能力の高さを問うてくる良問が多数出題されています。正確求められていることに解答していく力を創り上げおくことが、大切になります。
大問2 生物 昆虫
今年も実に桜蔭らしい、実験観察問題の出題でした。生物においてもグラフと表を読み解いていく力を計る問題となっていました。一つひとつの実験観察は単問で独立しているため、決して複雑ではなく難易度が高い問題ではありません。ですが、選択肢が選びづらいものが多くあり、ここでの失点は大きいものであったと考えられます。少し時間をかけてでも確実に正解を選びあげていくことができた受験生はここで得点を伸ばせたといえるでしょう。ただ、最終問題の問4のコナガの子の生存率が高くなるための条件は苦戦した受験生が多いのではないでしょうか。モンシロチョウの幼虫とコナガの幼虫が同じキャベツにいるとコナガの幼虫の生存率が高くなること、何もいないキャベツとすでにコナガの幼虫がいるキャベツに卵を産み付けた場合はすでにコナガの幼虫がいるキャベツに産み付けられた卵の方が生存率が高くなること、これらのことを瞬時に分析できた受験生が差をつけられたと考えられます。本年度のように、1つのテーマを深く掘り下げ、基本知識の確認と実験観察結果の考察をさせるという形式の出題が桜蔭の生物では頻出です。これらの問題を的確に解くためには、実験観察問題に慣れておくことはもちろんですが、幅広い知識を身に付けておくことが大切と言えます。ただ、去年のトカゲの行動の問題も今年のこのコナガの幼虫の問題も他校で出題されたものとほぼ同じテーマとなっています。変わった生物のグラフ、変わった生物の行動の問題を見つけたら、ぜひ、チャレンジしておくことをオススメします。
大問3 物理 てこ
今回は物理が2単元出題されています。てこは基本的な内容からの出題です。支点に対してどちら向きのモーメントであるの判断のできない生徒はここ桜蔭にはいないでしょうから、勘違いをしない限り、満点であったはずです。高度な計算力の必要な問題では無いだけに、ここでの失点は命取りだったことでしょう。
大問4 物理 手回し発電機
今回は手回し発電機と発光ダイオードでした。そうです。ここに時事問題がからんできました。発光ダイオードの実験といえば、発電機、充電器。これらの問題への対策は当然していたでしょうから、桜蔭受験生はここにもひとつも落としていい問題はありません。
これらに関する問題は近年では初見の問題ではなく、スタンダード化している問題です。。真新しい内容、近年入試で頻出の内容に関して、桜蔭受験生として話題としてだけでなくいろいろ試し、身に付けておく必要があります。
桜蔭の物理では、力学がもっとも多く出題されます。中でもてこ、輪軸、浮力などの出題が多いことがあげられます。ただし、ここにはやっかいな形式のものもあります。桜蔭が問題をどう解くか、( )を文章中に用いながら、誘導していくものです。これはこのまましたがっていくと、難易度がぐんとあがり、解答しにくくなっていきます。これらの問題の時にはまず、自分の方法で解き切り、それから必要な数値をあてはめていく方法をとることをオススメします。
また、女子の学校ではなかなか出題されない分野のものも多く扱い、その難易度を上げてきます。光、電流などもしっかりとした力を創り上げていく必要があります。またひとつのテーマを深く掘り下げる問題もが出題されます。近年の三極モーターなどがこの一例です。テキスト上の知識だけではなく、実際に手を動かして考えることは大きな桜蔭中対策の一つといえます。
大問5 化学 中和
今回は中和反応に関する出題でした。特に難しい問題ではなく、基本的な内容からの出題でした。このレベルの計算問題に関しては確実に、かつスピーディーに解けるようにすることが桜蔭合格には絶対必要だと言えます。一番最後にある問題としては基本的でありましたから、時間配分までふくめて、賢い生徒を合格させていくつもりなのでしょう。問題の並びとしてはいい方法です。この桜蔭の出題順番さえも飲み込み、自分の解きやすいところから確実に解き切り、ほぼ満点だった生徒の戦いだったのでは無いでしょうか。
桜蔭の化学では、気体発生量、中和、溶解度といった計算問題が多く出題されます。また、気体や水溶液などの物質の性質、燃焼に関する知識も合わせて出題されます。このときの情報のまとめ方がすべての鍵となります。たったひとつの情報を確実に的挙げることができれば、化学分野は確実に得点源となります。
全体として、今年の問題は例年よりも比較的、試験時間に余裕があったのではないでしょうか。
桜蔭中に合格するために必要な力は、難問や奇問を解くための力ではありません。桜蔭中の理科担当の先生方が、今年も桜蔭中へあこがれやまぬ受験生に向け「この問題を乗り越えていらっしゃい」とばかり、練りに練った素晴らしい問題をぶつける。受験生たちはそれらを自分の持てるすべてぶつけ、全力でぶちあたり、試行錯誤し、求められている解答をつくりあげていく。桜蔭の求めている力を試験時間内に出し切ることができた生徒だけがはじめて合格者としての入り口に立つことができる。
では桜蔭中学の先生方が欲しがっている理科の力とはどのようなものなのだろうか。理科という教科で求められる根本的な力である、観察し考察する力、資料の読み取り、データの分析、情報の加工、処理する能力。これらすべてを求めていると考えて良い。そしてもう一つ、時事問題、初見問題に対応する力。身の回りのどんなことでもきちんと納得して、理由付けをしていく。新しいテーマに対する情報網をめぐらせ、初見のものに対しても戦うことができるだけの術を持つ。
「桜蔭に入りたい」ではだめだ。「桜蔭中に入る!!」この覚悟を持って学習が必要な学校であると確信する。