以前から科学者が考えてきたいくつかの説の1つが,歯をなくすことで体重が軽くなり空を飛びやすくなるため,というものです。一部の例外はありますが,鳥といえばやはり空を飛ぶことが一番の特徴ですから,そのことから推論するのはとても自然な考えですね。先生もこの説を初めて知ったとき,とても納得をしたことを覚えています。
また,他にはくちばしの方がエサが取りやすい,という説などもありますが,皆さんは知っていましたか?
今まではこれらの説がとても有力なものと考えられてきました。しかし最近のニュースで,これらとはまったく違う説が発表されました。
今回はそのお話をしようと思いますが,その話に入る前に,まず皆さんは一部の恐竜は鳥類ととても近い生物であったことを知っていますか?今回,新しく発表された説も,恐竜の研究を進めていく中で考えられたものです。
では,具体的に考えていきましょう。最初に紹介した「体重を軽くする」という説ですが,恐竜の研究が進むことによって鳥類とは違う中生代の恐竜の中にも歯が無くて,くちばしを独自に進化させたものがいることがわかってきました。鳥類とは別の飛ぶ必要がない恐竜が,歯を無くす進化をしたということは,「体重を軽くする」ということ以外の理由があり,進化をする中で歯を無くしてくちばしに変えていったということになります。
また,「エサをとりやすい」という説ですが,やはり鳥類とは違う肉食恐竜の中にも歯を捨ててとがったくちばしを選んで進化したものがいることがわかってきました。
そこで,今回新しく登場した説が,「卵を短い期間でふ化させる」ために歯が無くなったのではないか,というものです。恐竜の卵がふ化するまでの期間を詳しく調べたところ,恐竜は数ヶ月も必要だったそうです。それに対して鳥は数日から数週間で卵がふ化します。
なぜ,ふ化するまでの期間がそのように大きく違うのかを知る重要な手がかりになるのが実は「歯」なのです。卵がふ化するまでの期間のおよそ60%が歯の発生に必要な期間であることがわかってきました。つまり「歯」が無ければ,短い期間でふ化できるということになります。
野生の生物にとって,卵のままの状態では,敵におそわれたり,環境が大きく変わったときに生き残ることが難しくなってしまいます。そこで少しでも早くふ化することは生物が生き残るためにとても重要なことだったと考えられますね。このことから,この新しい考え方が発表されました。まだまだ完全に答えが出たわけではありませんが,とても興味深い説が発表されました。これからも新しい考え方が登場してくるかもしれません。皆さんも答えは1つと思い込まないで,いろいろな考え方に触れて,新しい発想を持つことが大切ですね。