カニとはどんな生き物ですか?
そう問われれば皆さんはすぐに丸みのある体に細長い足が10本あるおなじみの姿を思い浮かべることでしょう。そんな皆さんの常識が大きく揺さぶられるかもしれないすごい発見がありました。
現在,見つかっているカニの仲間は約5000種類以上ともいわれていますが,おそらく皆さんの想像するカニから大きく姿形が違うものはそんなに多くはいないでしょう。では,カニはどのように進化をとげて今のような姿形になったのか,その進化を紐解く重要な化石がコロンビアで発見され,4月に発表されました。
今から約9000万年前のカニの化石が数十個ほどコロンビアで発掘されました。その保存状態はとても良いもので,とても珍しい発見だったそうですが,そのカニの姿がとても奇妙なものでした。大きな球のような目を持ち,足は今のカニのような細いものではなく,ボートのオールのように薄くて丸みのある足を持っていて,どうも泳いでいたようです。口も特殊な形をしていて,その不思議な姿形から,ギリシャ神話に出てくる複数の動物を合わせた想像上の生き物である「キメラ」という動物の名前を使って「不可解で美しいキメラ」という意味の名前がつけられました。ぜひちょっと調べてみてください。イラストを見ると驚くと思いますよ。とてもカニには見えませんから。
この発見により,エビやカニが入る十脚目という生物の仲間は,過去も現在も実にさまざまな姿形をしていてとても多様な生物であることが確認されました。そしてカニが,現在の姿になるまでにいろいろとその当時の環境に合わせて,迷いながらさまざまな姿になりながら進化してきたということが理解できます。生物が生き残るためにさまざまな進化を遂げてきたわけですが,その進化というものは,単純な道のりではないことがよく分かりますね。生物の進化については,いまだにわからないことだらけですが,それでも少しずつ新しい発見があり,研究者は一歩一歩ゆっくりとですが先へ先へと進んでいます。この研究への取り組む姿勢は,大いに学ぶべきところがありますね。
さて,皆さんはもちろんまだ研究者ではなく,中学受験をするための基礎的な勉強をしている段階にいます。受験勉強でこのような大きな謎に出会うことは,ふつうはないでしょう。しかし今勉強をしていることでもちょっと視点を変えてみたり,当たり前と思い込まないで自然な疑問を持つことができれば,受験勉強の中にも大きな謎が隠れているかもしれません。もし大きな謎に出会えたら,受験が終わった後,じっくりとその謎に挑戦してみるのもよいのではないでしょうか。実は学校によっては,そのような気づきのきっかけになって欲しい,と考えて作った問題を出しているところもあります。せっかく勉強したのですから,受験が終わったら終了ではなく,次につながるものを持って欲しい,と考えくれているのでしょう。受験生の皆さんは,受験が終わったらそのような中学校の先生たちの希望に応えるべく,まずはいろいろな疑問を持つことから始めてみてはどうでしょうか。