先日、小学校低学年の保護者様に「算数が得意になるためにはどのように勉強をしていけばよいのでしょうか。」という質問をされました。せっかく勉強するのであれば、正しく力が伸びていくような学習をしていきたいですよね。私はその質問に対して「まずは新しく出てきた言葉を正しく説明できるようにさせてください。その上で「なぜ」と常に唱えながら学習を進めさせてください。」とお答えいたしました。
算数の学習を進める上で、正しい言葉を身につけていくことは最も重要なことです。算数さらには数学という教科は定義からすべてが始まります。そして、そこから様々な性質を学んでいくのです。にも関わらず、現実としてここを軽視し「答えを出すための技法」の習得に終始している子どもたちも散見されます。その学習姿勢を変えない限りは「答えが出ればそれでよい。」という思考に陥り、結果として「やったことある問題は解けるけど、初見の問題には手も足も出ない。」となってしまいます。
中学校の数学の先生方も、定義を大切にするという点に関しては同意見なのだと思います。例えば今年、開成中学校1年数学Bの1学期中間考査にて『次の用語の定義をかけ』という問題が出題されました。具体的には
(1)線分AB
(2)線分AOB
(3)正三角形
という3問(15点分)で、意味が分からない人はいないはずです。でも、具体的に定義をかけと言われると意外と困る人も出てくるのではないでしょうか。きっと、そんな生徒たちを見越して開成の先生たちはこの問題を出題したのでしょうね。
ちなみに開成高校では2006年度の入試問題で『円周率の定義を答えよ』という問題も出題されています。円周率は小学校5年生の教科書に載っていますし、「円周率とは何か」は誰でも学校で習ったはずです。もし、そんなことなどすっかり忘れていたとしても円周「率」という言葉と「直径×円周率=円周の長さ」という関係からサクッと答えられそうなものですが、現実はそれほど甘くなかったようです。さて、これを読んでいる皆様はサクッと答えられたでしょうか。
このように定義を問う入試問題といえば、1999年度東京大学の数学の入試においても文理共通で『一般角 θ に対して sinθ,cosθ の定義を述べよ。』という問題が出題されました。それも、第1問で。実際、この問題において当時の受験生の中には「一般角θ」とあるにも関わらず、直角三角形を用いた定義を述べたものが少なくなかったそうです。その一方で、きちんと教科書にある定義を大切にし、正統な学習してきた人たちにとってはこの上ないボーナス問題だったはずです。
算数という科目を学んでいくうえでも、「算数だから言葉なんてどうでもいいじゃん」というのではなく、まずは言葉の意味(定義)をしっかりと抑え、それを人にきちんと説明できるような丁寧な学習を進めていくことを目指すと応用する力もついていきます。