本年度、女子学院中の入試出題文から。
海の猛威が、甚大な津波被害をもたらすことは、万人周知だ。しかし、三陸の漁業を再興させようと奮闘する人々は、海から受けた恩恵を深く心に抱き、いかなる海難に襲われても、海そのものを愛する信念を貫いて、苦難を乗り越えようとしている。
(峰飼耳「涙」による)
海は、私たちにはかり知れない恩恵をもたらしてくれますね。
また、ときには猛威の牙をむいて、生命・財産すら一瞬のうちに飲み込んでしまう。
震災の津波で大切な人を亡くしたご家族の思いは、他がいかに語っても語り尽くすことなど、とうていできない痛切なものに違いありません。軽々の評論は慎むべきだと思います。
それでも、筆者がテレビで見たという三陸の人たちは、海への愛情を貫く中で震災復興に立ち向かっていたといいます。報道は、常に一面。したがって、これが多くの東北地方の被災者の方々の意見を代弁しているかどうかはわかりません。
しかし、母なる海を心に描き、またそこから再出発しようと懸命に戦う同胞が厳然といらっしゃったことは間違いないのでしょう。
すると、被害から身を守るためのコンクリート防壁の建設や、倒壊した建造物の復旧作業といった外面の修復だけでは、真の復興は果たせないのではないかとも思えます。私たちの生活に不可欠な万物出生の母なる海や全ての生命的存在との関係性を胸に抱きつつ、勇気・元気をわかせ、そこを起点に現実的な防災の備えを万全に整えていく…この共生・共存の哲学を模索するべきなのかもしれません。それを、被災した地域の方々は、ごく自然に実践されているのではないでしょうか。私たちにはまだ十分、腑に落とせていない感覚であり、多くの学びがあります。
政策的な「震災復興」以前に、この現地の人々の心の声を忘れまいと思うものです。