例年の重厚長大で、長文読解と難度の高い記述問題の出題と比べると、受験生にとって、文章量もほどよく、内容的にも読みやすく感じたのではないでしょうか。しかし、一見とっつきやすそうではありますが、実際は質的に難度の高い記述問題の出題である点では、例年の桜蔭中学の入試問題であったと思います。
大問一
上橋菜穂子『物語ること、生きること』より
『指輪物語』の内容を題材に、一見批判の対象とされる「あきらめること」「捨てること」の持つ価値について書かれた文章です。筆者の言いたいことは理解しやすい文章だったと思います。
大問二
あさのあつこ『かんかん橋を渡ったら』
野球を題材にした物語文でした。読みやすい物語ではありますが、野球に興味がある生徒には面白く、興味のない生徒には少し身構える文章だったかもしれません。
●注目問題
①漢字書き取の問題の出題数が多かった
例年5問前後、多くても8問の出題だった漢字書き取りの問題が10問、しかもすべて書き取り問題で出題されました。
一の①「カッキ(的)を「活気」と書いてしまう、④「ホウフク」の「フク」を「服」「複」にしてしまう、などのミスをしがちです。
二の①「ジュカ」を難しく感じた生徒がいたのではないでしょうか。よく「文章題の漢字はその前後を読んで、先にやる」という指導を受けて、そのとおりにする生徒がいますが、それだと間違えてしまう場合があります。この「ジュカ」も前後だけでは正しい判断がつかない問題です。その意味では大変良い出題です。本文2行目「桜の木の陰で・・・」を根拠に「樹下」を導きます
今後も毎年10問出題されるかというと、そうではないと思われます。文章の中で書き取りで確認したい漢字が、いくつ含まれているか、で決まってくるのだと思います。
②「接続語の補充問題」(一問二)「ふさわしい修飾語の補充問題」(二問三)「慣用表現完成の問題」(二問二)が出題された
特に慣用表現の補充、「今でも(ア)を引いている」「レポートという言葉さえ(イ)になじまない」
の2問は意外に出来た生徒と出来ない生徒にわかれたのではないかと思われます。
③例年通り記述問題(5題)が出題された
一問三・問四「内容読解の問題」 文中の記述の相応しい部分を使ってまとめられます。どの部分をどの順番でまとめるか、エクタスの解答例を参考にしてください。
一問五「主題把握の問題」 「なぜ責任があるというのか」では「テロリスト」側の論理をまとめ、なぜ「生まれたばかりの赤ちゃん」を例にあげているのか、はその論理のおかしさの例示、と気づいてまとめる問題です。
二問四「心情把握の問題」 傍線直後の記述から判断してまとめます。桜蔭受験生は、ここはうまくまとめられたのではないでしょうか。
二問五「主題把握の問題」 監督が恭介を「詩人」と評価した理由をまとめる問題です。200字近くでまとめる力が問われます。
「桜蔭」で求められる力
①漢字書き取り力
単に漢字テストで練習するだけでなく、読書や問題演習の文章を読む中で出てくる本文中の熟語を意識してください。熟語の意味を調べて、使えるように語彙を広げてください。
②知識問題対応力
こちらも①と同じで、機械的な問題演習だけにとらわれず、文章を読む中で気づく、ちょっと変わったいいまわし、を意識して学習するくせをつけていきましょう。
③記述力の養成
「記述する力」は当然必要です。しかしながら桜蔭を志す生徒であれば、そこは概ねクリア出来ていくはずです。桜蔭の記述問題突破にはそれに加えて、文章や表現の持つ意味への深い「洞察力」が問われます。
「書く力」→「何を書くのかをつかむ力」→「それを過不足ない表現でまとめる力」に収斂していく学習が必要です。