2010年の国語・御三家中出題テーマには、男子3校において、大人たちや仲間の考えに対し、「本当にそれでいいのか」と、自我・実存的な心の叫びをつきつけるものがみられました。
2011年では、開成中・武蔵中・桜蔭中・女子学院中を中心に、激しく転変する現代社会の中で、真に意義ある人生を歩むために、古典的かつ普遍性の高い価値観を再発見する必要があるだろう、という問題提起がなされていました。
2012年では、開成中・桜蔭中・女子学院中・雙葉中を中心に、旧習にとらわれた心の壁を破り、己の気づきを、勇気をもって具体的な実践行動に結実させる人間像が読み取れました。
過去3年間の出題に脈打つテーマを総合したところ、「自我」の掘り下げから、普遍的思想への気づきに至り、それを経て、他に影響を及ぼしうる勇気ある行動に結びつける人間らしい成長過程を読み取ることができると思います。総じて、最難関校の求める生徒像として、「他者依存ではなく、自立した人間像(2010)」「個々の具象だけに迷妄するのでなく、古典的普遍性を抽象しうる思考力を持った人間像(2011)」「正しいと思ったことに対し、躊躇せず、一歩前進させていく勇気と行動力を備えた人間像(2012)」を汲み取れる模様です。 (本ブログ「御三家の哲学⑧」参照)
翻って、「2013年度受験用・中学入学試験問題集・国語編(みくに出版)」により、複数校で出題がみられた作品群のテーマから、近年の国語中学入試全般に共通してみられる出題内容を考察した結果、「友人」「家族」「自然生態系」との”むすびつき”こそが、最新の出題潮流だと言えることがわかりました。 (本ブログ「御三家の哲学⑨」参照)
小学生に対して、「周囲とのつながり・むすびつきを大切にしよう」というメッセージは、多くの場合、首肯されるはずです。しかし、「皆になびくだけでなく、自分が正しいと信じることを貫きなさい」とは、なかなか言えませんね…。方向性を自分で決め、自走するには、まだ、あまりにも判断材料となる経験知に乏しく、多くの不安がつきまとうからでしょう。しかし、年間の本シリーズにより、御三家中では、自立に耐えうる精神的成熟度を要求していることが、ご理解いただけたことと思います。この水準の生徒たちこそは、いずれ、恩師や友人・親からの刺激を吸収しつつも消化しながら、内面深く世の中の矛盾に気づき、自力でその解決策を探究して、人類の進歩と向上に寄与してくれるのではないでしょうか。
私は、未来の優秀なリーダーたちと日々、向き合う思いで指導させていただきます。これに過ぎる喜びはありません。志を同じくする生徒・保護者のみなさん、手を携えて、新たなスタートを切りましょう。