【2014 女子学院中の出題】
大林宣彦『今僕たちは本当に幸せか』
効率重視の社会…急ぎすぎるな!身の丈に合った価値を模索しよう。文化・芸術で、「不便さ」で、想像力で、もっと私達は心豊かに、幸せになれるはず!
岸本葉子『本だから、できること』
「私」という限られた存在。それでも、否、だからこそ、「宇宙」「生命の個別化」「輪廻転生」…時空をこえた未知への感興を、抑えることなどできはしないのだ!
私たちは、一日の時間の大半を勉強や仕事に費やし、目前の目標に追われて汲々としています。それはそれで、自身が責任ある社会人としての務めを果たすために必要なことですから、やる以上、努力と工夫を重ねて、自分らしくよりよいものに仕上げていきたいものですね。
しかし、必死に「もっとはやく」「もっと便利に」「もっと成果を」…とがむしゃらに走り続けてきた結果、茫漠とした心の渇きを押さえることができなくなった私たち現代人の叫びをどうしたものか…
“いま””ここ”の生活の繰り返しの果てにも決して気づき得ない、この世界のより本質的な価値があるとするなら、それにふれないで終わるのは、いかにももったいないのではないか?
だからこそ、時には文化・芸術に触れる機会を持ったり、直接の認識すら困難な時空を超越したものに思いをはせたりすることで、人生をより豊かで実りの多いものにしていくことができるのかもしれませんね。
もちろん、主戦場は、日々の生活の現実です。笑い、泣き、悩み、ちょっと勇気を奮って、少しずつ背伸びをしながら、チャレンジを続ける。そんな、地味で目立たない堅実な一歩、一歩が、将来の大成の因になることは疑いないでしょう。
私たちは同時に、ちょっとした時間をこじ開けて読書に勤しみ、古今東西の英知に触れ、人間学を深めていくこともできるのではないでしょうか?そして、そこで得られた学びを、また現実の生活に少しずつ応用・還元する。逆に、生活の中に見つけられたちょっとした知恵と、評価の定まった古典の内容を照合し、思索を深めてみる。「学」を「生活」に活かしつつ、「生活」の気づきを「学」と突き合わせたり新たな「学」を創造する起点としていく…この往復作業の中に、有意義な人生の道が見つかるかもしれません。これは決して、一部の専門家の占有すべきことではないはずです。
秋も深まっています。多忙な毎日をお過ごしのみなさんも、しばし、心に読書と思惟の暇をつくりだしてみてはいかがでしょうか?