安倍晋三政権への評価が争点となった、第24回参議院議員通常選挙は、7月10日投票が行われ、即日開票されました。その結果、与党(自民党・公明党)は安倍首相が勝敗ラインに設定した改選過半数の61議席を上回りました。一方、野党第一党の民進党は改選議席(43議席)から大幅に後退しました。なお、投票率は、約55%でした。
各党の獲得議席数は以下の通りです。
政党名
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獲得議席
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非改選
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合計
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自由民主党
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56
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65
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121
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民進党
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32
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17
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49
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公明党
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14
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11
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25
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日本共産党
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6
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8
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14
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おおさか維新の会
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7
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5
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12
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日本のこころを大切にする党
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0
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3
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3
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社会民主党
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1
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1
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2
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生活の党と山本太郎となかまたち
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1
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1
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2
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無所属・その他
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4
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10
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14
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合計
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121
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121
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242
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※非改選とは、2019年7月まで任期のある今回改選のない議席
2012年の衆議院選挙、2013年の参議院選挙、2014年の衆議院選挙、今回の参議院選挙と、安倍首相率いる自民党は、国政選挙で4連勝となりました。また、自民党、公明党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党など、憲法改正に前向きな勢力が、改憲発議に必要な3分の2(非改選と合わせて162議席)の議席を超えました。これにより、発議に向けた議論が進展する可能性が出てきました。
今回の選挙で目標に掲げた「与党の改選過半数」を確保した安倍晋三首相は、「新たな強力な布陣をつくっていきたい。」と述べ、重要政策に取り組む体制を強めるため、内閣改造を行う方針を表明しました。また、改憲について与野党の合意形成に意欲を表明するとともに、経済政策「アベノミクス」を加速させるため、2016年度第2次補正予算案を編成する方針を示しました。
野党共闘で議席増を目指した民進党の岡田克也代表は「良い戦いではなかった。非常に残念。」と改憲勢力の伸長を阻止できなかった反省を述べました。
参議院議員通常選挙は、3年に1回行われます。これは、憲法で「参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。」と定められているからです。そのため、参議院議員は2つのグループに分かれていて、任期が3年ずれています。参議院議員の定数は242名ですから、今回の選挙ではその半数の121名を選びました。それに対し、衆議院選挙では毎回全ての議員が選挙されます。そのため衆議院選挙は「総選挙」と呼ばれ、半数ずつ選ぶ参議院選挙は、総選挙ではなく、「通常選挙」と呼ばれます。
参議院選挙は、2つの選挙制度によってそれぞれ議員が選ばれます。有権者には2票与えられ、それぞれの選挙制度に立候補した候補者に投票します。
1つは「選挙区選挙」で、候補者個人に投票する選挙です。242名の参議院議員のうち、146名が選挙区選挙で選ばれています。今回の選挙では、その半数の73名が選ばれました。選挙区選挙では、都道府県を基準に、全国で45の選挙区が定められています。今回から、鳥取県と島根県、徳島県と高知県は合区により1つの選挙区となりました。選挙区ごとの定数は人口によって決められていて、東京都選挙区は6名、神奈川県選挙区は4名です。このように複数名が当選する選挙区は、合計で13選挙区あります。残りの32の選挙区は、1名しか当選しない選挙区で、「1人区」と呼ばれます。この1人区の勝敗が全体の選挙結果に大きな影響を与えます。
もう1つが「比例代表選挙」です。242名の参議院議員のうち、96名が比例代表選挙で選ばれています。今回の選挙では、その半数の48名が選ばれました。政党に所属していないと立候補できません。有権者は、政党名か、政党が名簿にのせた候補者の名前を書いて投票します。政党名と各候補者の得票を合計
して、「ドント式」という計算方法で各政党に当選議席数が割り当てられます。そして、党の中では個人名の票が多い候補者から順番に当選します。これを「非拘束名簿式」と呼びます。この非拘束名簿式では、知名度が高かったり、集票力が非常に強い候補者がいたりすると、その政党から立候補している他の候補者にも有利に働きます。
また、今回の選挙は、公職選挙法が改正され、選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられた、初めての国政選挙としても注目されました。若者の政治への参加が期待されます。今週は、東京都知事選挙が公示になります。エクタス生のみなさんも政治への関心を持つとともに、入試に向けて、「選挙のしくみ」「国会のはたらき」などについて、しっかり復習しましょう。