「受験算数の主役は何でしょう?」という問いに対する答えの候補は色々とあります。ですが,おそらく真っ先に上がるのは比ではないでしょうか?
今回は,比について一風変わった切り口から論じてみます。それは,論理学的な切り口です。
「論理学的」とは,ざっくばらんに言ってしまえば,言葉・記号の使い方に注目して物事を整理する,ということです。具体的には,次のようになります。
数を表す記号…’0”1”2”0.23”2/3’等
関数を表す記号…’□+△”□÷△”□+3”□+(□×△)’等
性質・関係を表す記号…’□=△”□=0.5”□+3=△’等
関数を表す記号は,□や△の位置に数を表す記号を代入すると,数を表す記号になります。たとえば,’2+3’は5という数を表す記号です。
性質・関係を表す記号は,□や△の位置に数を表す記号を代入すると,真か偽を表す記号になります。たとえば,’2=0.5’は偽を表し,’1+3=4’は真を表します。
さて,それでは比を表す’□:△’という記号は,どのタイプに分類されるのでしょうか。いくつか実際の使用例を見てみましょう。
‘1:2=2:4’は真を表します。とすると,’1:2’も’2:4’も’□=△’の□と△にそれぞれ代入できるのですから,’1’や’2/4’のように,数を表す記号であるように見えます。ところが…
‘(1:2)+3”1:2=3’これらは意味が分からない,変な式ですね。また,日常的な言葉づかいに視点を移しても,’1/2リットル’という言い方はできますが’1:2リットル’という言い方はできません。
ですから,’1:2’という記号は,’=’という等号の両側に置くことはできるにもかかわらず,数を表しているのではないということになります。したがって,比の記号’□:△’は,関数を表す記号ではない,ということになります。
そろそろ暫定的な結論に入りましょう。’□:△=○:☆’という関係を表す記号の一部分として,比の記号は意味を成すのです。’1:2=2:4’は真を表しますが,’1:2’や’2:4’自体が何らかの算数の対象を表しているのではありません。比とは4つの数の間の関係であって,’□:△=○:☆’という見た目の上では複合的な記号によって表される,ということです。
以上,「比とは関係である」というごくごく当たり前のことを,記号の使い方という側面から見てみました。