受験勉強としての歴史学習 その3
社会科は暗記教科と言われます。この「暗記」という言葉。あまりいいイメージがありません。暗記とは詰め込み教育の象徴でした。そこから「ゆとり教育」へ向かい、今は「脱ゆとり」。
暗記することは言葉を覚えることなんです。知識を増やすことなんです。これは非常に大切なことです。
でも暗記というと、まさに字のごとく暗いイメージ…。テスト前の「丸暗記」「棒暗記」。意味は解らなくてもとりあえず頭に詰め込まなくちゃ。目先のテストの点だけを稼げれば…。「暗記パン」があればいいのに…。このイメージですね。
丸暗記も、中学高校などの中間テスト・期末テストなど比較的範囲が狭い時には、ある程度有効(けっして褒められる方法ではありませんが)かもしれません。
でも、膨大な範囲で、長い時間をかけて学習していく入試では、やはり無理があります。
質の高い暗記とは、いうまでもなく「意味を理解しての暗記」「汎用性の高い暗記」つまり『実戦に通用する知識の記憶』です。
例をひとつだけあげます。
白河上皇 → 院政を始めた人
これだけをひたすら暗記すればいわゆる「丸暗記」です。テストで同じように聞かれれば答えられるでしょう。入試では…?。
「白河上皇はなぜ院政を始めたのかな」「わざわざ始めたということは院政って何か利点があるのかな」「歴史である以上、どの時期なのか」「前後関係は」「そもそも院政とか上皇という言葉の意味は?」
こういった疑問を持てる子は、そもそも丸暗記にはなりません。では、お子さまが自らそこまで考えられない場合は親がどう導くか。
中身のある暗記にするためには
☆人物 → テキストに出ている範囲でいいので時間順に業績を並べてみる
(わかる場合は)業績についての原因や結果をまとめる
☆事件・法令など → その原因と結果もセットでまとめる
例から考えると、上皇とか院政という用語の意味がわかったら、はいそれでおしまい!ではなく、下のようにまとめてみてください。
・白河上皇 → 1父は後三条天皇
自ら政治を行おうとした天皇→母
が藤原氏でないため可能
早くに崩御(亡くなる)→完全な
形ではない→だから息子が…。
2院政を行う
藤原摂関政治と距離をおきたい
→父のやり方を継ぎ、自ら政治を
行うため
3仏教を保護→都で僧兵が暴れる→
武士使って対抗→武士の地位が高
くなる
こういった流れを理解した上での暗記になっているか。
上の例から大事なところを空欄にして覚えているかどうか。
このようにまとめれば、やがて武士が台頭してくる理由のひとつにもつながるでしょう。
授業では、上記のようにまとめて、それをお子さまがノートに書き写すといったことになっていることでしょう。実際はもう少し詳しくやっているかもしれませんね。
これらをお子さまが理解しているかどうかを確認した上での暗記が必要なのです。
成績の上がる子は、授業で流れや意味を理解することに集中し、家では覚えることに時間を割く。つまり、「家で出来ることは家で行い」「塾では塾でしか出来ないことを行う」このスタンスと時間配分がコツです。
さて、上の例には院政が始まった年代を入れませんでした。1086年です。
この年代暗記は一番最後のプロセスで構いません。上記の意味を理解した上での年代暗記です。
入試問題の現状から考えると、保護者様がかつて必死の思いで暗記した年代の地位は低くなっています。「とにかく年代を暗記」は時代遅れの過去の遺物になりつつあります。
次回はその辺りに触れ、小学生が深く知りすぎることのデメリットもあげてみます。