同じテーマが続いていますが、もう少しおつきあいください。
前回触れた「詰め込み教育の象徴」=「暗記」の中でも,年代の暗記は手っ取り早く行えるからか、昔から単語カード、暗記シートなどの定番でした。そして、「鳴くよウグイス平安京」「人世むなしい応仁の乱」など名作定番語呂合わせが存在します。
「内容も理解せず、ひとつでも多くの年代とそれに当てはまる言葉を覚えた人が勝ち」という風潮。これは,詰め込み教育の反省として入試問題では影をひそめています。
出題は、年代そのものを聞いてくるとすれば、かなり基本になる(キーになる)年代ぐらいです。それよりも今の主流は並べ替えです。「次のア~エを古い順に並べ替えなさい」というパターン。明治時代以降の近現代史では、かなり細かい並べ替えが出題されています。
年代は,知っていればたしかに便利ですし、年代そのものを聞いていない設問にも対応はできると思います。ただ、学習する順番(優先順位)としては、最後でいいのではないでしょうか。大切なのは、出来事などの因果関係を理解して、時間の流れとして学習しているかどうかだと思います。年表を効果的に使うのもいいでしょう。可能であれば授業で学習した範囲でいいので、自分で年表をまとめてみることもお勧めします。
さて、歴史が大好きで、興味を持った時代を自分から積極的に学習しているお子さま。非常にすばらしいです。ただ、ごくたまにそれが失点につながることにもなる場合があります。 歴史学習では初等教育にあたる小・中学校の段階では、正確には事実と異なってしまっても理解しやすいように複雑な部分を簡略化することもあります。
たとえば、「奈良の大仏は何天皇のとき造られたでしょう」という問題があったとします。
ほとんどのお子さまは『聖武天皇』と答えるでしょう。入試でも正解は『聖武天皇』になると思います。
でも、正確にいうと、大仏造立の詔(みことのり)が出されたのは聖武天皇在位中の743年です。大仏が完成して開眼供養会(かいげんくようえ)が行われたのは752年。つまり次の孝謙天皇の代なのです。
これを知ってしまったお子さまは悩みます。果たしてどちらの天皇で答えるべきか…。上記のような曖昧な出題ならば、どちらで答えても間違いにはならないと思います。でも、入試ではテスト用紙の返却はありません。どう採点されたか、ましてや不合格になっていたとしたら、どうなっているか非常に気になるところです。
他にも、「弥生時代に、中国から金印を授けられたのはどこの国か」と問われたら『奴国』と答えると思います。でも、邪馬台国の卑弥呼も金印はもらっていると記録されています。さて、それを知っている子はどう答えるでしょう。これも出題が「紀元1世紀」とか「後漢から」など条件をつけるべきですけど…。
「鎌倉幕府が、1232年に朝廷を監視するためにつくった役所はどこにあるか」と問われたら、ふつうは『京都』と答えると思います。でも六波羅探題ですから、六波羅にあると答える子がいるかもしれません。×にはならないかもしれませんがあまりお勧めはしません。むしろ入試という観点からみると、どう採点されているかわからないわけですから、出題者が求めていそうな答えを書くべきです。かりに、地理で「群馬県で自動車工業がさかんなのはどこか」と問われたら『太田市』と答えるはずです。「スバル町」とは答えないと思います(太田市は富士重工業の企業城下町なので、こういう地名が存在します)。