御三家の哲学③

2012/6/22

麻布中

本年度、麻布中の入試問題から。

 

母は、一年以上、家に戻らない父と話し合いをすることになり、その際、「息子は家にいないほうがよい」と判断したであろう母によって、少年は母の兄夫婦にあずけられた。都会育ちの少年と田舎のおじさんは、住んでいる環境が異なり、お互いに会う機会も少なかったので、最初のうちは、ぎこちない関係だった。しかし、少年の夏の工作の材料にする木の根っこを掘り当てる目的で、一緒に山を歩き、作業して、自然の明るさと楽しさを共有するうち、次第にうちとけて、心を許せる関係に変化していった。さらに、おじ・おば夫婦は、生きていれば少年と同じ年頃だったと思われる亡き子の面影を、少年に重ね、愛情を注いでいたとも考えられる。       (堀江敏幸『トンネルのおじさん』による)

 

普段、大人の男性と関わりの少ない少年が、おじさんとのやりとりで、心を開きます。また、都会の中で、事実上の「母子家庭」生活を強いられ、店屋物の食事とコンビニ生活に慣れているであろう少年が、山の大自然に触れて、その楽しさを満喫します。

 

わたしたちは、未経験の世界に飛び込むとき、大きな心の葛藤を起こしますね。新しい学校・職場(部署)に入るときや、未知の領域の人と交際しなければならなくなったときなどは、期待よりも、不安の方が大きくなるのが、人の常ではないでしょうか。「それまでの生活パターンを守りたい、新しいことは怖い」という保守的欲求は、人によって程度の差こそあれ、誰しもに共通する習性なのかもしれません。

 

これから突入する新世界が、選択の余地なく進まねばならないものである場合、どうすればよいか?

 

この「少年」のように、愛情にあふれた夫婦が迎えてくれることもあれば、厳しい宿命に泣かざるえをえない道が待っていることもありえるでしょう。社会の現実の多くのケースは、後者なのかもしれません。

 

しかし、もしかしたら、新しい環境から「何かをしてもらう」ことを卒業し、目下の状況の中に、少しずつ自分から価値を見出して、自身を満たしていくことが、”大人”への第一歩なのかもしれませんね。これは、言葉で述べる以上に困難なことです。でも、そうしなければ、いつも「人のせい」にしたままの人生になってしまうのかもしれません。

 

「新しい第一歩には、自信をもって。また、”人頼み”を抜け出し、足下に泉を掘れ。」

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