今年の女子学院中の入試では、ごみやリサイクル、環境問題に関連した問題が多く出されました。その中でも大問4で取り上げられた「持続可能な開発目標(SDGs)」についてお話ししたいと思います。
SDGsとは,2015年に開催された「国連持続可能な開発サミット」で掲げられた17の目標の総称です。陸上や海洋の環境保全や気候変動への対策といった,環境問題に関する目標や,貧困や飢餓の撲滅,ジェンダー平等の達成といった社会的な豊かさを目指す目標などが含まれており,各国の取り組みにより2030年までに達成することを目指しています。また,「持続可能」という言葉に表現されるように,現在の世代の満足だけではなく,将来にわたって人類が豊かさを享受できるために何ができるか,ということが重視されています。
これらのゴールは「誰一人取り残さない」,つまり「この目標を達成することによって得られる豊かさや幸福は全員に与えられるべきだ」という考え方に基づいて作られていますが,言い換えれば「全員が主体的に考え,行動を起こすべきだ」ということもできます。例として,今回の女子学院の入試で出題された「プラスチックごみ」について考えてみましょう。例えば飲食店で,使い捨てのプラスチック製ストローを廃止し,代わりに繰り返し使える金属製のストローを取り入れようとしたとします。その場合,ストローそのものの値段が上がることや洗う手間が増えることなどから,提供する食事の値段を上げざるをえないかもしれません。また別の例としては,同じく女子学院の入試で取り上げられた,生産者(特に開発途上国の)が応分の利益を得られるような流通の仕組み・価格設定を行った「フェアトレード製品」や,平成25年の海城で出題された,熱帯林の保存と農家の収益確保を両立させる方法によって生み出された商品などがありますが,いずれも消費者にとっては割高に感じられるものが多いと思います。しかし,こうした「値段の理由」を消費者が理解して利用するようになれば,より多くの店舗や地域でこうした取り組みが広がることにつながりますよね。つまり,商品を「売る側」と「買う側」両方の協力が必要になると言えるわけです。
これまでも,こうした環境問題や社会的な問題は入試で多く取り上げられてきましたが,今後はこうした流れをくみ,単に知識や用語を問う問題だけではなく「自分たちにできることは何があるか」「各国でどのような取り組みが行えるか」といった,様々な視点に立って考えさせる問題が増えてくるかもしれません。来年の冬に入試を迎える人もそうでない人も,新聞やニュースなどを通してこうした問題に関心を持ち,考えてみる習慣が大切です。