2019年4月7日,みなさんはどのように過ごされましたか?
実はこの日,大変なことがあったのです。
みなさんはGPSというのはご存じですか?
Global Positioning Systemの略で,全地球測位システムという意味があります。
車のいわゆる「カーナビ」や携帯電話などに搭載されています。
この仕組みをカーナビを用いて簡単に説明すると,人工衛星から発信された時刻の信号が,カーナビのGPSレシーバー(受信機)に送られてきて,そのレシーバーの時刻と送られてきた信号の時刻の差に,光の速さをかけ算すると人工衛星からの距離がわかります(道のり=速さ×時間)。
理論上,3個の人工衛星からの情報で地球上のどこにいるかがわかるのですが,より正確に行うために,もう1個必要になります。
それはなぜかというと,人工衛星には精度の高い原子時計が搭載されているので,人工衛星から送られてくる時刻の信号は精度が高いのですが,GPSレシーバーの時計,すなわちカーナビの時計はクオーツなので,あまり正確ではありません。
光の速さは1秒間に30万kmなので,1マイクロ秒(=100万分の1秒)ずれるだけで,約300mのズレが生じます。ですから,4個の衛星の情報を使い誤差を少なくしています。
そのGPSで使用している時刻は,我々が普段使用している時刻(UTC:協定世界時)ではなく,GPS時と呼ばれる時刻体制を利用しています。
GPS時は,UTCで1980年1月6日午前0時(日本時間の午前9時)を起点にしていて,週の数と秒の数の2つの情報で表され,1週は7日なので,秒の数が604800になるときに繰り上がり,週の数が1つ増えるようになっています。
また,週の数は10ビット,すなわち,2×2×2×2×2×2×2×2×2×2=2の10乗=1024なので,0~1023の数を表すことができます。
ということは,週の数が1023の次の週の数は0となり,この週の数が1023から0になる現象をロールオーバーといいます。
1年を52週とすると,1024÷52≒19.7年おきにロールオーバーが起きる計算になります。
実は第1回目は,UTCで1999年8月21日に起きました。
ロールオーバーがおきると,週の数が0になるので,1999年ではなく,カーナビでは1980年と認識してしまい,カーナビ上での計算がうまくいかなくなってしまいます。
このとき,日本ではカーナビがうまく作動しなくて,全く違う場所を示したり,動かなくなってしまったりという不具合があり,ニュースなどで取り扱われていました。
それから19.7年後,UTCで2019年4月6日23時59分42秒,日本時間で2019年4月7日8時59分42秒に第2回目のロールオーバーが起こりました。
この日のニュースを覚えていますか?
特にこのことについてニュースはなかったですね。
さすがに,第1回目のロールオーバーを教訓にして,第2回目のときは不具合が起きないように設定されていたようです。
科学技術の進歩のおかげで,2019年4月7日は何事もなく過ごすことができました。
ところで,なぜ「日本時間で2019年4月7日8時59分42秒」という中途半端な時刻にロールオーバーを迎えたのでしょうかね?
それは・・・ UTCで1980年1月6日以降にうるう秒が18回あり,UTCが18秒増えたことが原因です。