2014 桜蔭中入試 理科 講評

2014/2/4

エクタス理科より桜蔭中

大問1「地学:彗星、星座」


 桜蔭の地学は、天体や気象からの出題が多くみられることが特徴です。天体では、様々な天体の動きに関する問題が多く出題されています。今回は、前半はパンスターズ彗星の動きに関する問題でした。太陽、地球、パンスターズ彗星の動きを、図2では北極上空から見た様子、図3では赤道上空から見た様子で表し、この2つの図からパンスターズ彗星の動きを立体的にとらえるという出題の仕方は桜蔭らしい問題と言えるでしょう。問1、問2で見える時刻と方角を、問3で尾の見え方を、問4と問5は時間が経つとどのように見え方が変わるかを出題しています。どれも図を使いながら判断できる問題にしてあればよいのですが、そのまま図を使うと間違う問題があるのは残念なところでした。また、これらの問題を時事問題として、彗星についての対策を打ってきた生徒にとっては、ただの知識問題となってしまう問題でもありました。後半は北極星の動きに関する日周運動、年周運動の問題でした。


 


大問2「生物:体温の変化」


 桜蔭の生物では、1つのことをテーマとして、それらに対する知識、実験観察の結果を考察させる問題の出題が多いことが特徴です。知識で問われる内容は基本的なことが多いですが、幅広く出題されるので広く知識をつけておく必要があります。また、グラフと表から情報を読み取らせ、その情報をつなげ、重ね、新しい情報に加工するような出題が多く見られます。今回は恒温動物、変温動物の体温と気温に関する観察問題でした。図1のグラフは頻出ですが、図2のグラフはおもしろいグラフでした。体温と太陽光と巣穴の温度の三つのグラフから、トカゲの活動の様子(ひなたぼっこ・活動する・日陰でじっとするなど)を解答していくものです。グラフの上下からトカゲの動きを判断するというとてもユニークなグラフの出題です。 また、図3のグラフは生存率と体温についてのもので、体調がくずれると体温が上がることを利用して、トカゲの行動を予測する良問です。これらすべて、グラフや表として与えられるので桜陰の生物はその場で思考する良問ということができます。


 


大問3「物理:ばね、てこ」


 桜蔭の物理では、力学がもっとも多く出題されます。中でもてこ、輪軸、浮力などがよく出題されますので、これらの問題は基本的な内容はもちろん、応用レベルの問題でも正確に、かつスピーディーに解く力を身に付けておく必要があります。電気や光なども出題されますが、力学に比べると頻度は少なく、内容も基本的なことが身についていれば解ける問題がほとんどです。今回は、ばねとてこを複合させた問題です。どの問題を解くためにもまずは、きちんと自分でばねの情報をまとめておきましょう。これができればあとは単純な問題になります。ばねの自然長がちがうので、その処理だけ注意しましょう。問7は、棒の重さを忘れずに。ここに注意を払い、AB2本のばねの長さが同じになることに気付くと簡単に解けてしまいます。大問3を正確に、かつスピーディーに解くことができたかどうかで合否が分かれたといえるでしょう。


 


大問4「化学:燃焼、気体の性質」


 桜蔭の化学では、気体発生量、中和、溶解度といった計算問題が多く出題されます。また、気体や水溶液などの物質の性質、燃焼に関する知識も合わせて出題されます。化学の分野において共通するのは計算も知識も基本的な考え方、解き方がしっかりと身についていれば解くことができるレベルの問題です。また、物理にも同じことが言えますが、表やグラフが与えられて、その結果をきちんと読み取る問題の出題が多いことも特徴の1つです。今回は、木炭を燃焼させて発生する二酸化炭素、ろうそくを燃焼させたときに発生する水蒸気、空気中の窒素についての性質を問う問題と、ろうそくを燃焼させた空気の成分の変化に関する問題でした。計算問題はなく、どちらも知識のみで解ける基本的な問題です。確実に得点することが必要といえます。


 


 


 桜蔭中の入試問題に求められる力は、難問や奇問を解く力ではありません。一つ目はよく練られた良問と骨太の計算問題をばりばりと確実に解ききる力。二つ目は表やグラフ(いろいろな形式のもの)から、問題で問われている情報を正確に読み取り、それらをスピーディーに処理・加工し、たったひとつの解答に結びつけていく力です。最後に三つ目は、時事的な彗星の問題や過去に出題された三極モーターの問題のような初見の問題についての対応力。これらの前提として、すべての分野の基本知識は当たり前に、そして基本的な計算問題はあらゆる分野からの出題が予想されますから、しっかりと準備し、これらの計算問題も確実に解ききる。実験観察の問題では、最初に問題全体のテーマをしっかりとつかむ。そのためには、まず問題をしっかりと読み切り、自分の中に飲み込んでしまう。そうすれば、その問題に対して構えたり、考えこんだり、悩み続けてしまうことはない。ここで重要なことは、なぜこの問題を桜蔭の先生方が出題してきたのか。その意図が見えてくるはず。そうすれば、選択肢の中に隠れている正解が浮かび上がってくる。桜蔭の問題を解ききっていくことで、得点をたたき出し、確実に合格する生徒となってもらいたい。



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