2025年度の中学入試も一段落しました。受験生関係者の皆様はお疲れ様でした。
今年の入試もいろいろと興味深い問題が出題されました。今回はその中から開成中の算数入試に関してとりあげます。
この学校は,毎年私たちの予想を良い意味で裏切る目新しい視点の問題を出題してきます。本年もたくさんの驚きや気づきのある出題でした。具体的な問題の記載はここにはしませんが,様々なところで目にできると思いますので興味のある方は調べてみましょう。
2025年算数
例年どおり大問4題の60分でした。年度により若干の変化はあるものの,構成や見た目に大きな変化はなかったです。
大問1:小問集合が2題,1つは単位換算の計算問題,1つは割合の文章題でした。後続の問題のインパクトを和らげるいわゆる普通の問題です。登場人物が「ショウヘイ君」なのは遊び心でしょうか。
大問2:4×9マスの長方形をルールに従い8つに分割し,その分割の仕方でポイントを決める,ルールの理解と試行錯誤を伴う問題でした。はじめはルールの理解の確認から入り,最終問題ではポイントを最大にする分割の方法を探る問題でした。昨年に続き,最大かどうかの状況次第で得られる点数に差がつく記載がありました。
大問3:規則的な動きを繰り返す3人と,その動きをグラフに表した状態から,それぞれの動きを解き明かす問題です。これだけ読むと普通の問題に見えますが,条件の見せ方がとても面白く見たことのない問題に仕上がっています。合否の影響が一番大きい問題だと思います。
大問4:三角柱の切断面に関する射影の問題です。具体的な数値計算は最小限にとどめ,ひたすら論理的に,どの長さとどの長さが等しいのかを考えて記述と作図をする問題です。
結果として,例年以上に驚きと戸惑いもあった出題内容だとは感じます。
「こんなのもはや算数ではない」であったり,「算数では差がつかない→国語力の評価にシフトした」などという意見も目にしましたが,果たしてそうでしょうか。学校HPに発表されている受験者平均と合格者平均の差異を見たとき,算数では8.3点の差がついていました。一方国語では9.7点の差がついていました。例年を見たとき,算数では10点から12点くらいの差異がつくことが多いので確かにそういう意見もあると思います。でも私はそうは思いません。
最難関入試で求められるもの
最難関入試で求められているのは,①状況を正しく観察整理し,②一見未知のものを経験に基づきル時の既知のものへと置き換え,③正しい判断をし,④正確に処理をし,⑤本当に正しいかを検証し,⑥それを人に正しく伝える,ことができるかどうかです。算数だろうと国語だろうと,もちろん理科でも社会でもそれは変わりません。入試では,算数の力「を」見ているのではなく,上記の力を各教科「で」測っているにすぎません。算数だから答えは「1通りの」「数」になる…などというのはたしかに慣例かもしれませんが,思い込みにすぎないのです。
我々は「過去問」を中心とする過去のデータに基づき指導を行いますが,その見た目にとらわれず,その問題の目的を正しく理解して学習する必要があります。問題を作る中学校の先生方は,実際に合格した生徒がその後の6年間の中でどのような課題点を持ちながら成長しているのかを授業などを通して日々観察しています。その現場で発生している課題点に訴求する問題が出題されるのは当たり前ではないでしょうか。
上記の平均点の差は,こういった「過去」にとらわれた学習をした我々が開成の要求に対応できていない現状が具現化したものと捉えるのが良さそうです。本年の算数入試は大多数の受験生に取っては手が出せる問題とそうで無い問題の差がはっきりつきすぎてしまい,結果として分布がつきにくく団子状態の結果となった…と予想されます。
実際このような出題がなされた以上,塾側はそこも踏まえての指導を行うことになります。その結果として平均点の差異は例年どおり落ち着いて行くとは思います。しかしながら,根本にある「過去に出た問題の類題を解けるようにする学習」だけでは足りないということを肝に銘じておかなくてはなりません。
新たな受験学年がスタートした今,いろいろと期待や不安の入り交じる中だとは思いますが,都合の良いデータや耳障りの良い言葉だけに振り回されることなく,正しい学習を心がけていきましょう。
有名な話をひとつ。
例えばコインを投げて3回続けて表が出ているとします。次に出るのは表か裏のどちらでしょうか??
裏だと思いたい人は,「3回も続けて表だからそろそろ裏だろう」という言葉を信じます。
表だと思いたい人は,「いやいやこんなときこそもう一回表だよ」という言葉を信じます。
しかしながら正解は,「どんなときも表も裏も出る確率は等しく50%ずつ」です。
やるべきことを正しくやり,この一年着実に努力をしていきましょう!