全国的に5月とは思えない暑い日が数日続きましたね。関東地方はあと一週間ぐらいで梅雨入りの予報です。少しでも涼しくなり、学習しやすい状況になり・・・と言いたいですが、しばらく湿度が高い天気が崩れた日が続きますので、受験生のみなさんは天気の変化、環境の変化に気を付けて学習を進めて下さい。
さて、本年の開成中ではクロマトグラフィーに関する問題が出題されました。クロマトグラフィー?と言われて何なのかパッとイメージができない人も多いと思いますが、中学受験の理科では以前はテーマとして何度か取り上げられたことのある現象です。
「あれ~、水性ペンで紙に絵を描いておいたらにじんじゃったから。」もクロマトグラフィーにより起こる現象の一つです。
クロマトグラフィーの中で一番身近な「ペーパークロマトグラフィー」を例にとって説明します。
ろ紙を細長く切り、下方の一点に水性ペンなどに使われる複数の色の成分を含む飼料をつけます。そして、インクに直接つかないように、ろ紙の下の端を水やアルコールにつけます(今回はアルコールにつけることとします)。すると、アルコールは少しずつろ紙に吸い上げられ、ろ紙の上の方まで昇っていきます。このとき、つけたインクがアルコールと一緒に昇っていくのですが、ただペンの色がアルコールと一緒に昇っていくのではなく、ペンの飼料の成分がいくつかの色に分かれて昇り、更に色ごとに昇る速さ(高さ)が違うため、ペンの色が複数の色に分かれて昇ります。
これはペンの飼料に含まれる複数の成分のろ紙への吸着力の違いによって起こります。吸着力とはろ紙にどれだけとどまっていようとするかどうかです。ろ紙への吸着力が弱い成分はアルコールの上昇とともにろ紙から速く離れ、速くろ紙を昇り、高い位置まで移動します。逆にろ紙への吸着力が強い成分はいつまでもろ紙にとどまろうとし、ろ紙を昇るのが遅れ、低い位置に移動します。成分によってろ紙への吸着力が違うので、結果的に成分ごとに高さが異なって移動します。
クロマトグラフィーは1906年にロシアの科学者ツヴェットが植物の色素を分離する実験で命名しました。ろ紙のような物質を固定相、アルコールのような物質を移動相と言い、これらはそれぞれ色々な物質を使うことができるので、様々な分野に応用されます。例えば、筒の中に固定相となる物質を入れ、様々な物質が混ざった液体を入れます。物質によって移動速度が異なるため、固定相となる物質の下から出てくる液体の速さ、順番によって液体を分離することができるのです。
何度か出てきた言葉ですが、クロマトグラフィーは物質を「分離」する方法です。中学受験ではろ過、蒸留、再結晶などとともに実は身近な「分離」をする方法の一つなのです。
近年の中学受験の理科ではみなさんの身のまわりにあるにも関わらず、みなさんが「実はよく知らない」ことがテーマとして取り上げられることが多いです。
「そんなの知らないよー」ではなく、「どんなことなんだろう?」「わかるって楽しい!」と思える受験生がこのような問題を突破できます。
「これぐらいで良い」と決めつけず、自分の理科力に更に磨きをかけ続けて下さい。
頑張れ!受験生!