古代ギリシャにはディオファントスという数学者もいました。『アリトメチカ』という著作が残っています。元来13巻あったのですが現在伝わっているのは6巻のみです。ところで、17世紀初頭にバシェという数学者がそれを注釈つきの対訳本として、すなわちページの右半分にはギリシャ語の原文、左側にラテン語訳を載せ、時々注釈を付けるという具合にして刊行しました。九州大学の高瀬先生から送っていただいた写真を載せておきますので参考にして欲しいのですが、この大型本の各ページには余白がかなりあるのです。そうして、その余白に「フェルマの大定理」で有名なフェルマが、「大定理」を含むたくさんの書き込み(48個の命題)を残したことが近代数学の発展にとって大きな出来事となったのです。
この書き込みされた本の現物は残っていないのですが、フェルマの息子のサミエルが、17世紀後半に、父親の書き込みが該当箇所に挿入された形でバシェの対訳本を復刊させました。おかげで、「フェルマの欄外ノート」として知られる48個の命題が伝わりました。高瀬先生の写真には両方の本が並べられているカットもありますよ。