今年は早めの梅雨入りとなりました。気温が高くは無いですが湿度が高いので暑く感じる日が続きそうです。受験生のみなさん、体調管理にはしっかりと気をつけて下さいね。
さて、本年度の開成中学校の大問3では、昆虫の擬態に関する問題が出題されました。ナナフシが植物の葉や枝に擬態すること、ハナカマキリがランの花に擬態すること、ホソヒラタアブがセグロアシナガバチに擬態すること、それぞれの理由を答える問題です。みなさんそれぞれどのような理由で擬態をしているかわかりますか?
擬態とは、他のものに様子や姿を似せることを指します。擬態の中で色彩だけを似せたものを保護色と呼びます。有名な動物の保護色の例を挙げます。サンマやイワシ、アジ、サバなどは背中側が青色っぽい色、腹側は銀色っぽい色をしています。これは、背中側から見たとき、つまり海の外から見たときには水面の色(青色)に見え、腹側から見たとき、つまり海の中から見たときにも水面の色(太陽の光を反射した銀色)に見えます。こうすることで捕食者である鳥や魚に見つかりにくくしていると言われています。トラやシマウマの縞模様は草むらや茂みと似せた保護色です。茂みや草むらは緑色、トラは黄色と黒の縞模様、シマウマは白と黒の縞模様なのに?と思った人がいると思いますが、実はヒトやサル以外のほ乳類には白黒(明暗のみ、色彩が無い)の世界が見えています。白黒の世界であれば縦縞模様というだけで保護色になりますね。
さて、擬態は、周りのものに似せることで目立たなくする「隠れる擬態」と、天敵やエサを欺く「目立つ擬態」の大きく2つに分かれます。開成中の問題で言うと、枝や葉に似せて天敵から目立たないようにするナナフシの擬態、ランの花に似せてエサの昆虫から目立たないようにするハナカマキリの擬態が「隠れる擬態」、セグロアシナガバチに似せることで敵を欺くホソヒラタアブの擬態が「目立つ擬態」となります。また、生物学的にはセグロアシナガバチそのものの模様も擬態の一つとなります。
セグロアシナガバチそのものが擬態?と思った人がいると思います。スズメバチの仲間やアシナガバチの仲間は詳細こそ違えど、どの仲間も黄色と黒色の縞模様をしています。まるで「私たちは黄色と黒色の縞模様をしている、この模様の昆虫は危険な毒を盛っているから近づくな」と言わんばかりです。このように毒を盛った生物がお互いに似たような体色を持つことも擬態であり、ミューラー型擬態と言います。
一方で、ホソヒラタアブがセグロアシナガバチに体色を似せることで、ホソヒラタアブは毒を持っていませんが、毒があるように見せることで天敵から身を守っています。このような擬態をベイツ型擬態と言います。
もう一つ擬態の種類があります。例えばAというヘビが猛毒を持っていたとします。すると、Aを捕食した動物はその毒によってやがて死んでしまいます。するとそれを見ていた仲間は二度とAを食べないように・・・とヒトのように都合良くはいきません。仲間は別のAを見つけると捕食します。Aに毒があると知った動物は死んでしまいますので、これでは猛毒を持っていても意味がありません。そこで、Aは死なない程度に毒を持ったBというヘビに体色を似せ、擬態します。この先はわかりますね。Bを食べた動物は苦しみます。すると二度とBを食べません。Bに擬態したAも食べられなくなる、ということです。このAが行う擬態をメルテンス型擬態と言います。
・・・が、既に気づいた人もいると思いますが、BはそもそもAに擬態(ベイツ型擬態)していますね。面白いことに進化の中でお互いがお互いに擬態するようになったのです。
擬態と言う言葉、なんとなく聞いたことがあると思います。しかし大変面白く、興味深いものです。
受験生のみなさん、うまくいかないことがあった場合は、親や先生に相談することはもちろんですが、身近なお友達に相談をし、真似てみることでも効果があるかもしれませんよ。用方法を共有することができれば、家でも塾でもどこでもより良い学習をすることができます。
頑張れ!受験生!