『車内が大変混みあってまいりました』

2025/5/7

エクタス社会

皆さんは普段どのくらい電車を使っているでしょうか。通学・通塾のためにほぼ毎日乗っているという人もいれば、めったに乗らないという人もいると思います。めでたく志望校に合格すれば、ほぼ全員が電車で通学することになるので、電車に乗る機会が少ない人は、小6になるまでに徐々に慣れていけるとよいと思います。

さて、みなさんは「ラッシュアワー」「通勤ラッシュ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。電車などの交通機関が非常に混雑する、朝と夕方の通勤・通学の時間帯を指す言葉で、通学に電車を利用している人はまさにこの時間の電車に乗っていると思われます。一方、エクタスの高学年の授業は16時台から17時台に始まり、19時台から20時台にかけて終わるものが多いので、通塾時間が帰りのラッシュのピークに重なることは少ないはずですが、それでも混雑していることが多いでしょう。タイトルに挙げた『車内が大変混みあってまいりました』はそうした車内でよく聞かれるアナウンスで、少しでも多くの人が乗れるように、扉付近で立ち止まらずに奥まで移動するよう促されることが多いです。

こうした混雑を数値で表すときに使われるのが「混雑率」です。混雑率は、単位時間あたりの輸送人員を輸送力(=列車が収容できる人数×列車の本数)で割って計算します(一般社団法人日本民営鉄道協会による)。在来線では、座席数に加えてつり革や扉付近の手すりにつかまることのできる人数を収容人数としているため、「混雑率100%」ではそれなりに立っている人が多いと感じる状態です。150%では「肩が触れ合わない程度」、200%では「体が触れ合い、相当圧迫感がある」というのが目安とされています。例えば国土交通省のデータでは、2023年度の三大都市圏における平均混雑率は以下のようになっています。

東京圏136%  大阪圏115%  名古屋圏123%

これは平均の数字なので、時間帯や路線によってはもっと混雑しています。例えば最も混雑する区間・時間帯の数値を見ると、池袋や新宿といった、主要なターミナル駅を通る路線を中心に150%を超えています。また、同じ方面に向かう交通手段が他にほとんどないために、利用者が集中しやすいつくばエクスプレスや、車両数や運行本数に限りがある日暮里・舎人ライナーの数字も高くなっています。他にも調べてみると、その路線が混雑する理由がさまざまであることがわかって面白いと思います。一方で、今から約50年前の1975年(昭和50年)度の平均混雑率は、東京圏221%、大阪圏199%、名古屋圏205%となっており、かなり過酷な混雑ぶりだったことが想像できます。昭和後期の通勤風景の映像を見ると、乗り降りの際に脱げた靴が駅のホームに散乱している様子や、電車の扉からあふれそうになっている乗客を、駅員さんが必死に押し込んでいる様子がたびたび見られます。駅員さんが白い手袋をしているのは、手を振って合図をする際に遠くから見えやすくするためでもありますが、万一手が電車の扉に挟まったときに、手袋だけ残して手を引き抜けるようにするためであるとも言われています。映像の中で乗客を押し込んでいた駅員さんも、きっと何度もこの手袋に助けられたことでしょう。車両の改良や本数の増加といった事業者側の努力に加え、オフピーク通勤やフレックスタイム制、テレワークの導入など、利用者側の工夫の積み重ねによって、混雑が徐々に緩和されたことがわかります。

一方、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などの行楽シーズンには、新幹線の混雑もよく報道されます。新幹線では混雑率ではなく「(自由席の)乗車率」という表現がこれまで用いられてきましたが、これは輸送人員を自由席の座席数で割ったものを指します。先に挙げた在来線と違って座席に座ることを前提としているため、「自由席の乗車率100%」は、「自由席の座席が全て埋まっており、立っている人はいない」という状況を指します。繁忙期では乗車率が200%に及ぶこともありますが、それはすなわち自由席の座席数と同じだけの人数が通路やデッキに立っているという意味ですので、大変な混雑であることがよくわかります。こうした状況を改善するため、自由席車両を減らしたり、全ての座席を指定席にするなどの対策が進められています。

また、繁忙期の指定席特急料金の価格を上げ、逆に閑散期の価格を下げることによって、利用者を分散させる方法も導入されています。この方法を「ダイナミック・プライシング」といい、テーマパークの入場料金や宿泊施設の料金にも取り入れられているものです。これによって繁忙期の過剰な混雑を和らげるとともに、収益を増やしつつ、閑散期にも安定した収入をもたらすことができるのです。コロナ禍以降の入試では、観光や旅行が取り上げられることが増えていますが、特に最近は「オーバーツーリズム」がよく出されていますので、その解決策の1つとして「ダイナミック・プライシング」の出題も増えています。2024年度の広尾学園や2023年度の聖光学院では記述問題の形で出題されているので、言葉だけでなく内容やその効果も合わせて知っておくことが重要です。今後、もしも旅行や遊びの計画を皆さん自身で立てることがあれば、こうした「時期と料金の関係」にも注目してみてほしいと思います。

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