2024年度の中学入試算数の中から、今回は聖光学院中①の入試について取り上げます。
聖光学院中は神奈川最難関の中学校であり、例年とても歯ごたえのある入試問題が出題されています。本年はそんな中新しい切り口の出題がありました。算数を紙の上の学問としてだけでなく、実際の生活の中での出来事として捉えることができているかも判断できる良い問題です。再三再四書いていることですが、学校ごとに出題傾向があるわけですが、これは単なる見た目やジャンルの問題ではなく、学校側が「どのような考え方を受験生に大切にして欲しいのか」が現れるところです。
とても長く情報量の多い問題ですので、是非実際の入試問題を見て欲しいです。ここでは簡単に一部分を取り上げます。
大問5 ※実際は(1)から(5)まであります
(1) あるスーパーの「月ごとの売り上げ」を折れ線グラフで表しています。これを見て「売り上げの前月と比較した変化率」表すグラフを選択肢から選ぶ問題です。
売り上げが直線的に増加している部分があるのですが、前月との変化率は一定にならないことに気づけるかどうかがポイントです。
(2) 今度は前月との「売り上げの変化率が」示されていて、それに対応する「月ごとの売り上げ」のグラフを選択肢から選びます。示された変化率が、+20と-20%を繰り返しているのですが、その場合実際の売り上げは一定値の反復にはなりません。
塾などでひたすら問題集とにらめっこしてきた受験生にとって、「こんな問題見たことない」「やり方が分からない」「捨て問だ」などの声が聞こえてきそうですが(たしかにここで失点しても他でカバーすれば入試としては合格ですが)、「見たことのない問題に出会ったときにどう対応するか」「机上で学習してきたことをこのケースにどう適応するか」「与えられた状況と精一杯向き合えるか」を学校側は見たいのだと思います。そしてこれらのことは多くの最難関の学校で重要視されていることです。要するに「言われたことをきちんとする」のは当たり前で、それ以上の「言われていなくても自分で観察して考えて判断する」ことが必要だということです。もちろん「言われたことをやらずにやりたいことをする」のではない、という誤解のないようにしてほしいですが。
ちなみにこの問題では、具体的な金額を当てはめて確認検証すればすぐに正解は求まります。
もう一歩突っ込んで、それが何故なのか一般化できればそれは立派な「学び」です。
教室でも先生と生徒との会話で、
先生:「なぜそうなったの?」
生徒:「そうなると思ったからです」or「え?だめなんですか?」
のような嘘みたいな場面が日常的に見られることは、当事者としては笑えない状況です。
正解を当てて褒めてもらう、のではなく、自分が正解と判断した答えを皆に納得してもらえるようにする、と意識すると良いかもしれません。役立ててみましょう!