2015 渋谷教育学園幕張中 入試 理科 講評

2015/1/23

エクタス理科より

大問1[物理・地学:熱・太陽放射と地球放射]

 渋幕の理科の問題の大きな特徴として、テーマをひとつにしぼりそのテーマについて多角的に質問が進んでいく出題の形式が挙げられます。近年では、2012年度のサンゴ礁の問題がこれにあたります。真新しいテーマに対して文章、図、表で条件を与え、その条件から推理、推測、理論づけて高レベルな問題に答えていくつくりになっています。この中学の地学分野の出題には天体、気象、地形と様々な単元にわたりますがやはり、どれも正確に読み取る力をはかる問題、読み取った情報をきちんと整理できる力をみる問題、さらに加工し利用することができる力を判断する問題というようになっています。

物理分野では力学、運動、電気、磁石などのやや難易度の高い計算問題が出題されます。こちらも与えられた条件を用いての計算問題などが出題のメインです。今年の出題の太陽定数という言葉は高校地学の内容に当たり、また、電磁波の概念は高校物理の範囲です。今回はこれらをうまく融合した素晴らしい問題でした。太陽放射と地球放射に関する様々な「約束」「決まり」をリード文に散らばせ、それらを1つ1つ拾い上げ処理しながら、正解を見いだしていくという大変練られた良問です。

このように、この学校は「新しいテーマ」(近年ではワゴンホイールなど)を与え、情報、条件を自らの力で読み取り、計算し、解答しきることのできる受験生を欲していることがよくわかります。まさに、「真の理科力を問う」問題です。これからもこのようなすばらしい出題を続けてくれると思います。

 

大問2[化学:溶解度・結晶]

 渋幕の化学では濃さや中和、気体発生量のグラフや表を読み取った上での計算問題が多く出題されます。今回の問題はグラフを読み取った上での溶解度の計算と、リード文を読みながら、「大きな結晶をつくるための条件」を考えさせる問題でした。

いくつもの実験の比較から、結晶の成長について考えていきます。結晶の成長が温度変化によって左右されることなどに気づく事が大切でしたが、実は火山岩、深成岩の結晶の成長も「急に」「ゆっくり」というキーワードがありました。この火成岩のの結晶のでき方と今回のこの問題をもしつなげることができた生徒は、この問題の半分は知識問題だったかも知れません。

この<実験4>で出てきた大きな結晶をつくる装置は、モーターなどで水を循環させるものではなく、身近なものを利用してつくられたものです。このような「新しい工夫」のある実験装置からも、「水温が高いと溶解度が大きく、低いと溶解度が小さくなることで再結晶が起こる」ということに気づき、判断を下していけば正解にたどり着くことができたことと思います。ここは確実に得点しておきたい問題であったと思います。

 

大問3[生物:動物・魚類]

 渋幕の理科の問題に、カラー写真を利用したものがほぼ毎年みられるようになってきました。その中には生物の写真をもとに、比較し考えさせる問題がみられます。近年は、昆虫、水中の生物、貝殻などがあたります。今年は食卓に上がる魚類でした。サンマは姿焼きの状態、アジは開いて焼いた状態、サバは切り身にした状態で写真が出ています。普段これらの魚をどのように料理するかを知っていた受験生は名前を確実に当てることができたでしょう。こられを見ていくことが写真問題の醍醐味ですが、これらの写真を比較、分析することであとの問題を知らなくても答を出せるように作成されています。たとえば、Ⅳ群の選択肢の(て)は魚を上=背中側からみた様子です。Ⅰ群のひれのつき方を比較すると、サンマであることがわかります。また、Ⅰ群のサバの切り身の模様をよく見ると()の頭部の後ろに同じ模様が見られます。「気づいてほしい」「しっかり観察して欲しい」という渋幕の先生からのメッセージとして受け取れるのでは無いでしょうか。

ただ知識を詰め込むだけの理科ではなく、常に観察する姿勢、気づこうとする目を持ち続けこのような問題に解答していく必要があるでしょう。

 

 

 本年度の問題は全体的に難易度が高く、得点が取りづらい問題が多かったと言えます。特に、練るに練られた大問1で時間を取られ、比較的解答し易い大問2、大問3に時間をかけられずに得点が伸びなかった受験生が多かったのではないでしょうか。渋幕では、化学の難易度の高い計算問題、生物の生物同士を比較させる問題、一つのテーマを深く掘り下げる問題、地学の見慣れない図に関する問題、物理の真新しいテーマを題材とした難易度の高い計算問題の出題が頻出です。これらの問題で正確に得点を取るためには、しっかりとした基礎力、そして数多くの問題に取り組むことで養われる応用力が必要です。単純な知識や計算パターンの丸暗記の学習ではなく、原理原則を理解した上にあるさらなる高レベルな問題への取り組みが大切です。こうすることで培われる「真の理科力」が渋幕で求められる力であると言えます。

 

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