開成中の入試問題より

2015/9/18

エクタス理科より開成中

受験の天王山ともいえる夏期講習を終え、入試に向けて追い込みをかけていく時期になりました。大変暑かった夏が過ぎて少し涼しくなり、受験生のみなさんは自分の限界に向かって自分を磨き続ける日々を過ごしていると思います。

 

さて、「重さを調べる道具は?」と問われたときに、みなさんは何と答えますか?

「上皿てんびん」「ばねばかり」「台はかり」「さおばかり」「電子天秤」「体重計」など、中学受験で題材として扱われるものや、実験器具として登場するものなど様々なものが挙げられますね。

はかりを大きく分けると、ばねばかりのように引力(地球上では重力といいますね)を利用したものと、上皿てんびんのように質量(引力によらない物質そのものの量)を利用したものの2つに分けることができます。

ばねばかりは力によってばねが伸び縮みする原理を利用していますので、はかる場所の引力によって重さが異なります。例えば、月の引力は地球の重力のおよそ6分の1の大きさです。ですから、地球上で60g(正確には60[g重]と表します)のものを、月面上で同じばねばかりをつかって測定すると、10gを示すことになります。

一方、上皿てんびんは支点から左右に伸びたさおの両方の皿にはかりたいものとおもり(分銅)をのせて、回転力(モーメントとといいます)がつり合うことを利用しています。今、支点から両方の皿までの距離が等しいとき、60gのものの重さをはかるためには60gの分銅を反対側の皿にのせることが必要です。これらの道具を同じように月面上に持って行った場合、60gのものの重さは6分の1の10g、60gの分銅の重さも6分の1の10gになります。よって上皿てんびんを使った場合、地球上で60gを示すものは月面上でも60gを示すことになります。このように、引力によらない物質そのものの量を「質量」といい、重さの単位を60[g重]と呼ぶのに対し、質量の単位を60[g]と呼び区別をしています。(中学の物理の時間に重さと質量の違いを詳しく習います。引力によって運動の様子が変化することを詳しく体感できます。)

 

今年度、開成中学の問題では、てこの原理を利用した道具である「さおばかり」の問題が出題されました。みなさん、さおばかりに関しては塾でも学校でも理科の時間に学習すると思いますが、さおばかりを大きく分けると2種類のさおばかりがあることを知っていますか?

1つは、みなさんのよく知っているさおばかりです。棒の一点を支点とし、皿をつけ、皿にはかりたいものをのせ、おもり(分銅)を動かしながらつり合わせることでものの重さをはかるさおばかりです。このさおばかりを「ローマ式さおばかり」といいます。

もう1つは、棒に皿をつけ、はかりたいものをのせ、おもり(分銅)は棒の反対側の端に固定します。もうわかるかと思いますが、この状態で支点の位置を動かすことによってものの重さをはかります。このさおばかりを「デンマーク式さおばかり」といいます。あまり見かけないように感じますが、「おもり(分銅)の位置を固定し、どこを支点とすればつり合いますか?」という問題を見かけたことがあると思います。あまり見かけないだけで、考え方は中学入試の問題でよく見かけるものですね。

 

今回の開成中のさおばかりは大変おもしろい問題でした。通常(※もう「通常」と言ってはいけませんよ!)、0gを示すおもり(分銅)の位置は支点に対して皿の反対側ですが、今回の問題は0gを示すおもり(分銅)の位置が皿と同じ側になり、そのことを答える問題が出題されました。過去に麻布中でも同じような問題が出題されました。過去の問題まで幅広く学習していた受験生はもちろん、普段見慣れている解答にならずとも、恐れることなく解答を出す自信をつけた受験生が正解できた問題といえます。

 

あとおよそ100日で2016年を迎えます。ここからが勝負です。実力を最大限まで伸ばし、身も心も最高の状態で受験を迎えられるよう、努力を重ねていきましょう。

 

がんばれ!受験生!

関連記事related posts

エクタスニュースエクタス社会開成中

2015 開成中入試 社会 講評

 1 江ノ島を題材にした明治時代までの歴史の基本問題  2 朝鮮半島をテーマにした近現代史と公民の融合問題  3 日本各地の温泉を題材にした地理の総合問題    昨年に続き大問3題の構成,小問数も63で例年とさ…

エクタス理科より

ノーベル賞②-開成中学の入試問題より

前回のブログで紹介したように、2012年度のノーベル賞受賞者が10月8日より発表されています。生理学・医学賞の分野では、京都大学教授の山中伸弥iPS細胞研究所長がiPS細胞を初めて制作したことを称えられて受賞することに決…

エクタス理科より麻布中

2021年ノーベル賞

先日、眞鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞しました。 受賞理由は、50年以上前に「大気海洋結合モデル」をつくったことで、これは現代の気候研究の基礎となったとされています。 「大気海洋結合モデル」とは、簡単に言うと、数か月…

新着記事latest posts

2025/4/21

お知らせピックアップ

渋谷教育学園幕張中 学校説明会 5/30開催!

Z会主催 エクタス協賛渋谷教育学園幕張中学校 学校説明会のご案内【参加無料】 5/30(金)に渋谷教育学園幕張中学校の学校説明会を開催いたします。同校は自調自考をモットーに生徒の成長を促し、海外大学も含め全国でも屈指の進…

お知らせピックアップ

2025/4/10

エクタス国語科より

『記述問題は後ろから考えよう』

学校でも新学年を迎え、入学式・始業式と行事が多かったことと思います。学校生活がようやく落ち着いたころにはすぐGW…でも、受験生にとっては「遊ぶ期間」ではなく「勉強漬けになる期間」かもしれませんね。 今年の開成中学の国語は…

エクタス国語科より

2025/4/9

お知らせピックアップ

小6「筑駒・御三家・駒東 最難関スーパー講座」【2025年度前期】申込受付中!

講座は土曜日午前を中心に設定、1科目から受講が可能です。受講生には担当講師のナビゲートにより個別カリキュラムを提案。 毎年筑駒・御三家・駒東中合格者を輩出するエクタスの看板講座。最難関校の入試傾向に直結する教科別講座を今…

お知らせピックアップ

pagetop